「奥さん、いえスターシアさん・・。」
「はい?」
「本当によく地球に来てくださいました。私は前からあなたにお礼が言いたかったんです。
ありがとうございます。」
「・・・・・??
お礼を言うのは私の方ですよ。
守と一緒にこの星で生きてゆくことは私にとって喜びではありますが、不安もありましたもの。
千代さんはなにくれとなく私に心を砕いてくださいました。
私はどんなに気持ちが助かったかしれません。いつもありがとうございます。」
「・・いえ、スターシアさん、そういってくだすって私は嬉しいです。
私はただただあなたに恩返ししたかっただけで、
その想いだけでこちらで仕事をさせていただいてます。
この仕事の話をもってきてくれた守君には感謝してるんです。」
「恩返し???私は千代さんには何も・・・・???むしろ恩返しするのは私の方ですよ。」
「スターシアさん。あなたの名前は地球人なら誰でも知っています。
あなたが地球のためにしてくださったこともみんな知ってます。
あのころ誰もが地上にでてお日様のもとで、緑の大地の上で暮らしたいと願っていました。
そしてそれはかなえられることがないとみんなが絶望してました。
そんな時、あなたが手を差し伸べてくれました。
私の夫はとうとう今の地球を知らずに地下都市で放射線の影響で病気になり亡くなりました。
私と娘は生き延びて、そして孫は今では地上で存分に友達と遊びまわってます。
夢のようです。あのころあきらめていた夢が叶ったんです。
あなたのお陰で。
私はずっとあなたに伝えたかった。感謝の気持ちを。
この家での仕事は神様が私にくださったプレゼントだと思ってます。
守君のたっての頼みだということもあったけれど、
地球の恩人のあなたに会う機会なんてそう滅多にないことですからね。
私なりに地球人としてあなたに恩返しがしたかったんです。」
「そんな・・私は・・・。」
スターシアには千代の言葉は意外だった。
地球にやってきた当初、連邦政府の大統領とも、防衛軍の長官とも会見したスターシアだった。
彼らの代表者としての感謝の気持ちを彼女は受け取ったが
それはあのコスモクリーナーを提供したことに対してだろうと思っていたし
もう星は消滅してしまったが、友好国の女王として自分を丁寧に扱ってくれているのだと
そんな風にスターシアは思っていた。
だから千代のように一般の地球人からそんな風に自分が感謝されているなどとは思ってもみなかったのだ。
「私は・・・ただの提供者にすぎません。千代さん。
あの装置を実際に組み立て稼動させたのは地球の人たちじゃあありませんか。
もとの青い星にもどそうと努力したのは地球の人たちじゃあありませんか。
私の力ではありませんよ。」
心底とまどった表情を見せるスターシアに千代は微笑んだ。
この人は何もわかっていない。純粋でいわゆる「天然」なのだろう。
でもスターシアのそういうところが千代には大変好もしく思えた。
守もきっとそういった彼女の性質を好いているのだろうと思った。
「スターシアさん、それでもあなたが手を差し伸べてくれなかったら今の地球はないんですよ。」
千代は優しくスターシアの手に自分の手を重ねた。
「・・・・・・。」
突然スターシアが表情をゆがめた。
「奥さん!?」

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