※このお話は「花」(めぼうき作)の後日話です。「花」はコチラ ****************************** オカエリナサイマセ ばちるどさん作 「 まあ ・・・ ずいぶん広いのねえ。 公園みたい・・・ 」 「 ああ。 ここは研究開発の目的で作られた植物園だからな。 うん、こう ・・・ ず〜っと緑が広がっていると気持ちがいいな。 」 「 ええ ・・・ ああ 空気が甘いわ・・・ 」 スターシアは目を瞑り大きく息を吸い込むと ほんのりと笑った。 「 ・・・・・・ 」 そんな妻が可愛くて 守はす・・・っと頬にキスを落とす。 「 ・・・ もう ・・・ 守ったら ・・・ 」 「 ははは 大丈夫、蝶が見ているくらいさ。 さあ こっちだよ、ここの社員さんが来ているはずだ。 」 守は 水色のツーピース姿の細君を伴って事務所の方に歩いていった。 日曜日 ― 守とスターシアは種苗会社の植物園を訪ねていた。 <イスカンダル草> の研究・開発に携わってくれた会社の人々に会いにきたのだ。 お礼を言いたいの。 是非・・・ わたし 嬉しくて うれしくて ・・・ もう涙が出そうよ・・・・ 妻はその種の袋を胸に抱き 本当に涙を流していた・・・ 「 ああ これは ・・・ 古代さん。 いらっしゃいませ。 」 事務所に入ると 日曜なのに数人の人々が出勤していた。 「 こんにちは、お邪魔します。 昨日はどうもありがとう。 今日は妻が是非お礼を・・・と言いましてね。 一緒に連れてきました。 」 「 え・・・ つ 妻って・・・ 女王陛下を、ですか!? 」 「 こんにちは。 スターシアです、 あの ・・・ 私、女王じゃありませんわ、ただの古代の妻です。」 「 これは・・・ 失礼いたしました、古代夫人・・・ ああ 奥の研究専用ガーデンに主任がおります。 ずっとイスカンダル・ブルーの研究に携わってきた人なんです。 どうぞ? 」 「 まあ そうですか。 ありがとうございます・・・・ 」 二人は案内され さらに奥にある庭へと進んだ。 「 さあ こちらです。 ・・・ 主任? いらっしゃいましたよ 」 「 ・・・ まあ ・・・・! 」 ここは ― あの星と同じ だった。 一面の野に白い花が咲き乱れ 揺れている ・・・ いま イスカンダル・ブルー はその白さを誇らしげに光の下に示していた 「 ああ 見事だな。 なあ スターシア・・・ 」 「 ・・・・・・・ 」 スターシアは静かに花の間を歩いてゆく。 「 古代さん ・・・ 」 初老の男性が静かに進み出てきた。 彼がこの研究所の主任なのだろう。 「 おお 初めまして。 妻が是非こちらにお邪魔したい、と言いまして・・・ 」 「 はい・・・ 花たちがお待ち申し上げておりましたよ。 彼らの女王陛下を・・・ 」 「 え ・・・? ・・・・ ああ ・・・ 」 主任の指差す方を見やり 守も黙って頷いた。 白い花たちは こぞって満開の花びらをゆらし蕾の首を持ち上げ緑の葉を広げ ・・・ 彼らの女主人を迎えていた。 オカエリナサイマセ オカエリナサイマセ ・・・ オマチシテオリマシタ 女王陛下 イスカンダル・ブルーの咲き誇る中心に イスカンダルの女王スターシアが微笑んで立っていた。 彼女はいつだって、そう永遠に ― 女王スターシアなのだ・・・ そうあって欲しい・・・と守は心から願った。 2011.3.4 TOP |