※このお話は「花」(めぼうき作)の後日話です。「花」はコチラ

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オカエリナサイマセ


                        ばちるどさん作



「 まあ ・・・ ずいぶん広いのねえ。 公園みたい・・・ 」
「 ああ。 ここは研究開発の目的で作られた植物園だからな。 
 うん、こう ・・・ ず〜っと緑が広がっていると気持ちがいいな。 」
「 ええ ・・・ ああ 空気が甘いわ・・・ 」
スターシアは目を瞑り大きく息を吸い込むと ほんのりと笑った。
「 ・・・・・・ 」
そんな妻が可愛くて 守はす・・・っと頬にキスを落とす。
「 ・・・ もう ・・・ 守ったら ・・・ 」
「 ははは 大丈夫、蝶が見ているくらいさ。  
 さあ こっちだよ、ここの社員さんが来ているはずだ。 」
守は 水色のツーピース姿の細君を伴って事務所の方に歩いていった。

日曜日 ―  守とスターシアは種苗会社の植物園を訪ねていた。
<イスカンダル草> の研究・開発に携わってくれた会社の人々に会いにきたのだ。

    お礼を言いたいの。  是非・・・
    わたし 嬉しくて うれしくて ・・・  もう涙が出そうよ・・・・

妻はその種の袋を胸に抱き 本当に涙を流していた・・・

「 ああ これは ・・・ 古代さん。 いらっしゃいませ。 」
事務所に入ると 日曜なのに数人の人々が出勤していた。
「 こんにちは、お邪魔します。 昨日はどうもありがとう。
 今日は妻が是非お礼を・・・と言いましてね。  一緒に連れてきました。 」
「 え・・・ つ 妻って・・・ 女王陛下を、ですか!? 」
「 こんにちは。  スターシアです、 あの ・・・ 私、女王じゃありませんわ、ただの古代の妻です。」
「 これは・・・ 失礼いたしました、古代夫人・・・ ああ 奥の研究専用ガーデンに主任がおります。
ずっとイスカンダル・ブルーの研究に携わってきた人なんです。  どうぞ? 」
「 まあ そうですか。  ありがとうございます・・・・ 」
二人は案内され さらに奥にある庭へと進んだ。

「 さあ こちらです。   ・・・ 主任? いらっしゃいましたよ 」
「 ・・・ まあ ・・・・!  」

    ここは   ―  あの星と同じ だった。 一面の野に白い花が咲き乱れ
揺れている ・・・
    いま イスカンダル・ブルー はその白さを誇らしげに光の下に示していた

「 ああ 見事だな。 なあ スターシア・・・ 」
「 ・・・・・・・ 」
スターシアは静かに花の間を歩いてゆく。

「 古代さん ・・・ 」
初老の男性が静かに進み出てきた。  彼がこの研究所の主任なのだろう。
「 おお 初めまして。 妻が是非こちらにお邪魔したい、と言いまして・・・ 」
「 はい・・・ 花たちがお待ち申し上げておりましたよ。  彼らの女王陛下を・・・ 」
「 え ・・・?     ・・・・ ああ ・・・  」
主任の指差す方を見やり 守も黙って頷いた。

白い花たちは こぞって満開の花びらをゆらし蕾の首を持ち上げ緑の葉を広げ
 ・・・ 彼らの女主人を迎えていた。

    オカエリナサイマセ  オカエリナサイマセ ・・・ オマチシテオリマシタ 女王陛下 

イスカンダル・ブルーの咲き誇る中心に イスカンダルの女王スターシアが微笑んで立っていた。
彼女はいつだって、そう永遠に ― 女王スターシアなのだ・・・ 
そうあって欲しい・・・と守は心から願った。

2011.3.4

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