■冬のから騒ぎ 



「 お早うございますッ ! 」
「 ああ お早う。 」
「 ・・・・ ぉ ・・・ はよ〜ございま〜・・・ふぁ 〜〜 」
「 お〜は・・・よ 〜・・・ですぅ〜〜 」

地球防衛軍本部の朝は 早い。
無論、ここは<公的機関> だし、デスク・ワーク主体な部署ゆえ始業はごく普通の時間である。
当直もあり、実際には24時間制であるが 所謂背広組は世間一般の勤め先とたいしてかわらない時間に
出勤してくるのだ。
当然 滑り込みセーフ・・・だの アウト! も日常風景である。
制服組は 5分前行動 が骨の髄まで身に付いているので登庁時間に遅れることはほとんどない。

  ― 今朝も 白い息を吐きつつ、人々は次々に門をくぐり出勤してきた。
地球防衛軍本部の一日 ― ごく平和なはずの一日が 始まった。


「 はい、地球防衛軍本部 総務課です。 
 ・・・ はい? は? ・・・恐れ入りますが もう少し音量を下げていただけませんか・・・
 え? 普通? はあ ・・・ あの〜 まずお名前とIDを ・・・ は? はいはい はあ。それで?
 はい〜 了解いたしました、秘書の方にお伝えしておきます。 どうぞ おだ・・・・ あら。 」
総務課女性は憮然とした表情で通信用のジャックをはずした。
「 ・・・ な〜に? 誰か欠勤とどけ? 」
向かいの同僚がのんびりと聞いてきた。
「 そ。  たかが欠勤届けに な〜に大騒ぎしてるのかしらねえ・・・ 古代参謀は・・・ 」
「 ふ〜ん ・・・ やっぱり外宇宙帰りは変わっているのよ・・・ 」
「 そ〜ねェ・・・  え〜と・・・ さんぼうほんぶ・・・っと 」
カチ・・・っとクリックひとつで <欠勤> を入力してお終い。
彼女たちはそれっきり、古代参謀の欠勤についてはキレイさっぱり忘れてしまった。
  
   しかし。  古代さんち のトンデモナイ一日は この時すでに開始していたのであった・・・!



    ―  ・・・・ なんだ、この暑苦しさは・・・!

その朝 古代 守は異様な暑さの中、寝汗まみれになり目を覚ませた。
身体全体が火照っている。
一瞬 暖房装置が故障したのか? と思ったが そうでもなさそうだ。
寝返りを打とうとすれば そこかしこの関節が悲鳴をあげた。
「 ・・・・うッ・・・ こ  これは ・・・? 」
慌てて隣に眠る愛妻を見つめたが 彼女はごく穏やかな寝息をたてていた。
ほっとしつつも さらに脇のベビーベッドを覗き込んだが 愛娘・サーシアも機嫌よくねんねしている。

      ・・・ ああ よかった・・・!
      しかし 
      これは・・・ うん、もしかしたら。 
      いかん、すぐに検査キットを ・・・!

守は 布団から自身の身体を引き剥がす思いでベッドから抜け出、バスルームにむかった。


「 ・・・・  やっぱり ・・・ マズイな・・! 」
数分後 守は感染チェック簡易キットをみつめ唸っていた。
地球連邦の全市民に配布されているそのキットは何回見直しても 陽性 にマークが出ている。
「 くそッ!  十分注意していたつもりだったのだがな。 どこで拾っちまったのかな。 う〜む・・・ 」
ぞくり、と悪寒が背中を這い登る。  熱がまた上がったのかもしれない。
「 診療所に行かないと  ・・・  いや! その前に! 」
守はもう一声 唸った。 
「 スターシアとサーシア! まず第一に二人を護らなければ・・・! 
 二人とも 地球のウィルスに免疫なんぞ 持ってないのだからな! 」
・・・よし・・・! と彼は立ち上がった。

        まずは  ―  ともかく  マスク だ!





その年の冬、 地球・北半球ではインフルエンザが流行っていた。
手回しのよい連中や高齢者・妊婦・子供は とっくに予防接種をしていたので 
爆発的流行、というわけではなかった。
しかし  ― 多忙な勤労世代の多くは 予防接種をうけるヒマがなく、彼らの間にじわじわと広がった。
地球防衛軍本部も例外ではなかった。
それでも宇宙勤務者たちは 一種隔離状態なので無事 ・・・・
「 流行が下火になってから地球に戻りたい 」 と半ば本気で地球防衛軍の宇宙戦士達はボヤいていた。

  古代 守 も例外ではなかった。
イスカンダルから妻を伴って帰還し、参謀として防衛軍本部に復帰した。
当然 激務の連続 ・・・  予防接種まで手が回らなかった。

    ま。 俺は流行風邪なんぞ罹るわけ ないな。
    心配なのはスターシアとサーシアだ!
    ワクチンも 大丈夫かどうか予断を許さんしな。

自分自身についてはタカを括り、心配性の彼は妻子をなるべく外出から遠ざけていたのだが。 


「 ・・・・スターシア?  起きているかい。 」
バス・ルームから戻り、守はそっと自分たちのベッド・ルームをノックした。
「 守?? どうしたの?  もう起きたの・・・・? 」
ぱたぱたとドアに駆け寄ってくる足音が聞こえる。
「 あ! ダメだ、 ドア、開けるな! 」
「 ??? どうして?  ねえ ・・・ なにがあったの?
 目が覚めたら守がいないのですもの・・・ 心配したのよ。 」
「 きみは?? 気分が悪いとか頭痛がするとか。 熱っぽいとかの症状はないかい? 」
「 え?  ・・・ ええ、私は元気よ、 サーシアも・・・・ 」
「 そうか! よかった・・・! しかし油断は禁物だ。  いいか・・・これからマスクを渡すから・・・
 いや だめだ! 接触伝染するからな。 
 う〜ん・・・よし、ここにな、マスクと消毒液をおくから。 俺がよし、と言ってからドアを開けろ。 いいな。 」
「 ??? 守! ねえ なにがあったの??  」
「 スターシア! 復唱しろ! 」
「 ・・・ 許可が出てからマスクと消毒液を収納します、古代参謀! 」
「 よろしい。 」
「 守 ・・・ 顔が見たいわ。 ねえ お早うのキス ・・・ 」
「 ・・・く ・・・・ぅ・・・ だ、だめだ! 上官命令に従いたまえ。 」
「 ・・・ ・・・・ 」
「 へ 返事は。 」
「 ・・・ 愛してるわ ・・・ 守 ・・・ 」

    く 〜〜〜〜・・・・・!


守は一瞬くらくらするほど スターシアが愛しくて、
ドアを蹴破りあのしなやかな身体を抱き締めたい衝動に駆られた。
「 う ・・・くぅ〜・・・ いや! ここで負けるわけにはゆかん!
 明日のために今日の誘惑に耐えるのだ・・・! 」
ぐ・・・っと自身を律したのは さすが、というか 当然、というか。
<スペース・イーグル> の異名は伊達ではない。
無我夢中でタラップを駆け下りた あの時 とは訳がちがう。
「 ・・・ い いや。 それよりも次の行動だ! 」
熱っぽさなどモノともせず、守は寝室をぐるりと見回し少し思案していたが すぐに携帯電話を取り上げた。

「 ・・・・ と。  ? ・・・ おい、はやく出ろ〜〜 なにやってるんだ!? 
 お。  ―  進。  ああ 俺だ、 あア〜〜??? 」
「 はい、 古代です。  ・・・あら 守さん? 」
「 ゆ、雪・・・・??  なんで君が進の部屋に・・・ あ す、すまん、無粋なコトを・・・ 」
守は一瞬電話を落としそうになったが 辛うじて踏みとどまった。
「 進を呼んでくれないか。  実は頼みがあるんだが ・・・ まだ寝てる?? 叩き起こせ。
 うん、スターシアとサーシアをそっちにしばらく泊めてくれ。 」
「 ・・・・・ ?  ・・・・・ 」 ( ←  ・・・・ は雪の返事 )
「 ああ 俺、例の流行風邪にとっつかまっちまってな・・・ 
 おい 雪。 進のヤツはまだ起きないのか? 布団、剥ぎ取れ! 」
「 ・・・・・〜〜〜 」
「 ・・・ えええ?? す 進もなのか?? アイツも流行性感冒〜〜 !?
 なんだって予防接種をしておかんのだ!? 職務怠慢だ! 」
自分自身のことなどはるか彼方に投げ上げて、守は憤慨している。
「 先月にうちに予防接種するよう通達が出ていたはずだが。  
 え? ・・・ ああ そうだったな・・・ 進はパトロール艇で宇宙勤務中だったな。 
 しかし雪、君は大丈夫なのか?  え? もう罹患した?  そりゃ・・・ めでたい。 」
「 ・・・〜〜〜  ・・・・ 〜〜〜 」
「 うむむ・・・ 万事休す・・・ いや! 諦めんぞ。 オトコだったら闘って闘って闘いぬく! 」
一瞬 彼は瞑目したがすぐに携帯電話を握りなおし指示を飛ばし始めた。
「 よし。 雪、進を乗せてウチに来い。 その後、スターシアとサーシアと共に防衛軍本部に出勤せよ。
 両名は本部託児室にて待機させろ。 同室長には俺から連絡を入れておく。  いいな。 」
「 ・・・! ・・・・!   ・・・・! 」 ( ← 復唱している。 )
「 ・・・ よし。 進はこちらに待機させる。 以上が本日の行動予定だ。 」
さすが M21881式雪風型宇宙突撃駆逐艦 <ゆきかぜ> 艦長 ・・・
いや、毎年どんぱち攻められている地球防衛軍参謀、あっと言う間に決断を下した。
「 では 08:00 ( ← まるはち まるまる )に当地に到着のこと。 君も遅刻するなよ! 
 ・・・ よし! 」
古代参謀は 森雪の復唱を確認すると満足げに電話をきった。
「 ・・・よし ・・・ これで当面の安全は確保されたぞ。  ううう・・・寒い・・・ 」
流行性感冒の高熱のため がちがち震えつつ彼はやっとベッドにもぐりこんだ。




「 こちらが本部付きの託児室です。  お義姉さま。 」
「 まあ ・・・ 可愛いお部屋ね。  雪さん どうもありがとうございます。 」

  ― とにかく雪は上役の命令を遂行した。
熱で朦朧としている許婚者を毛布に包み義兄の家に届け。
その脚で義姉と姪を乗せ防衛軍本部に出勤した。

雪はスターシアを本部別館にある託児室まで案内した。
スターシアの腕の中では サーシアがくうくう気持ちよさそうな寝息をたてている。

防衛軍本部には多くの女性職員が勤務してる。
事務職だけでなく、軍人として務める女性も少なくない。 職場結婚が大半だから・・・ 
 ― 当然 託児室は必須だ。
ゼロ歳児から学齢前までの子供たちを預かっている。
雪はIDカードを翳し 託児室に入っていった。
「 ― 失礼します。  託児室長! 司令長官秘書の森です。 」
「 ・・・ おはようございます。  」
「 森秘書官、おはようございます。
 はい!  古代参謀より伺っております。 諸事了解です。
 ようこそおいでくださいました。 」
恰幅のよい中年の女性がにこにこしつつ現れ スターシアと雪に答礼した。
彼女もれっきとした防衛軍の女性衛生士官なのだ。
「 急にお邪魔して申し訳ありません。  よろしくお願いします。 」
「 こちらこそ おいでくださって光栄です 女王陛下。  さあさあ・・・ こちらへ。 」
「 はい・・・・ 」
丁寧にアタマを下げるスターシアを 室長は満面の笑みで迎えた。
「 それじゃ お義姉さま。 私はこれで通常勤務に戻ります。 夕方 お迎えに参ります。 
 古代参謀の命令により陛下とサーシア王女殿下を拙宅にお迎えいたします。 
 おねえさま〜〜 いっしょに帰りましょ♪ 」
「 ありがとう・・・雪さん・・・ 」
雪は 託児室長とスターシアに敬礼すると託児室を離れた。
スターシアは静かに 義妹にアタマを下げた。

「 さあさあ・・・ サーシアちゃん? ご機嫌はいかが? こちらにいらっしゃい・・・ 」
室長はスターシアの腕からサーシアを抱きとった。
「 ご事情は古代参謀より伺っております。  陛下、朝のお食事をどうぞ。 
 奥の部屋にご用意してあります。 」
「 ありがとうございます。  あ・・・あの、どうぞ スターシア と呼んでください。
 私はただの・・・古代の妻でサーシアの母ですから。 」
「 了解。  では スターシアさん、こちらへどうぞ。
 まずはお母様が元気でいないとね。  サーシアちゃんも不安に思いますから。 」
「 はい ・・・ 」
スターシアは 託児室の中に足を踏み入れた。
ドアの向こうから ・・・ 泣き声やら笑い声と一緒に温かい空気がどっと流れてきた。

    ああ ・・・ ここは温かいわ ・・・・

スターシアの頬に ほう・・っと血の気が昇ってきた。   


「 あの ・・・ 私 なんの資格も持っていませんけれど・・・
 子供達の遊び相手くらいならできます。 やらせてください。 」
朝食をすませると スターシアは室長の女性に申し出た。
「 まあ そうですか? それじゃ・・・・プレイ・ルームにいる子供たちの相手をお願いしましょうね。
 皆 お腹はいっぱい、オシリもキレイでご機嫌なはずですよ。  」
「 ・・・ はい・・! こちらですね? 」
スターシアは 木目も鮮やかなドアを開けた。
外に向かって大きく窓を取り、明るい太陽の光がいっぱいに射しこんできている。
フローリングの床には ― 

  ぷぷぷ・・・・・    ぷわっ〜〜    きゅきゅ くちゅ・・・  だ〜だ〜〜〜

5〜6人の赤ん坊がもこもこのオシリをふりふり スターシアににじり寄ってきた。
「 まあ〜〜 かわいい・・・! 」
一人を抱き上げると もう一人が膝にすがり付いてきた。 背中にも一人、ぴたり、と頬を寄せる。
しゃぶっていた縫い包みを放り出し 這いずってくるのもいる。
「 ・・・あらら・・・ さあ いらっしゃい・・・ 」
スターシアの周りに 部屋中の子供たちが集まってきた。




「 まあまあ 守君〜〜 水臭いじゃないの。 すぐに私に連絡してちょうだい。 」
「 ・・・ 千代さん すみません・・・ 」
「 はいはい、病人は大人しく寝ていること!  進君、 あなたもよ。 」
「「 了解 〜〜〜 」」
「 よろしい。  」
古代家のお手伝い・大沢千代はけらけら笑い、兄弟の額に冷たいタオルを乗せた。
「 さ、 お薬は飲みましたね? じゃあゆっくり眠るのね。
 そうすれば一週間でさっぱりキレイに治りますよ。 」
ぽんぽん・・・と二人の羽根布団を直すと千代は病室にした座敷を出ていった。

雪が、高熱でがちがち震えている進を連れて来、そしてスターシアとサーシアを乗せて出勤していった後
古代兄弟が 枕を並べて唸っていると・・・
   ―  ぴんぽ〜〜ん   ぴんぽ〜〜ん !!
さんざん玄関チャイムが鳴ったあと 元気な声が入ってきた。
「 こんにちは。  奥さん??  ・・・ どうかしました? 」
大沢千代が きょろきょろしつつリビングに入ってきた。
彼女は古代家の大切な助っ人 ・・・ 玄関の電子ロックにも登録済みである。
「 あらあ??  おでかけかしら・・・ へんねえ?  寝室かなあ・・・失礼しますよ〜 」
 ドンドンドン・・・!  ぶっ叩くみたいなノックの後、ガチャリと寝室のドアが開いた。

「 ・・・ 千代さんだ。 ああ 助かった・・・! 」

「 奥さん・・・?  まあ・・?!? 守君?? どうしたっていうの? 
 え・・・ 進君まで??  」
「 ち 千代さん・・・ 千代さんは予防接種 済ませていますか・・・ 」
「 え? よぼうせっしゅ?  ・・・ ああ 流行風邪のね。 ええ ええ とっくに。
 こちらの奥さんとサーシアちゃんに移しては大変ですからね。
 あら・・・ 奥さんはどうしたのよ、守君? サーシアちゃんも・・・ 」
「 ― これで地球は救われた ・・・! 」

    「  まあまあまあ・・・! 」

守から一切を聞くと、千代はてきぱきと仕切りはじめた。
そして その結果 ・・・

「 ・・・ 兄さん ・・・ 」
「 ん? なんだ 進 」
「 ・・・ うん ・・・ あのさ。 こうやって兄さんと枕を並べて寝るのって さ・・・ 」
「 ああ ・・・ 何年・・・いや十年ぶり以上か ・・・ 」
「 ・・・ うん ・・・ なんか 俺 ・・・へへへ 」
「 ばか 大人しく寝てろ・・・ 」
「 ・・・ うん ・・・ 兄さん・・・ 」
「 ・・・ ばか ・・・ 」
守と進は 座敷で布団を並べ、大沢千代の鉄壁の看護を受けることとなった。

「 なあ〜に・・・ 特効薬をブチ込んでおいたからなあ 1週間も大人しくしていればオッケーじゃよ。 」
往診に来てくれた佐渡医師は からからと笑った。
「 それにしてもなあ〜 大沢のお千代さんに看病してもらえるとはお前ら兄弟、果報者だ。
 ありがた〜〜く思うんだな。 」
「 ま〜あ 佐渡先生ったら。 そうそ、白菜の漬物、よかったら持って帰ってくださいな。 」
「 ひょお〜〜♪ お千代さんの漬物は絶品ですからな。 酒の肴に最適じゃよ。 」
「 うふふ・・・ こちらの病人さんたちはどうぞお任せを。
 二人ともしっかり回復させて 奥様と雪さんにお返ししますよ。 」
「 頼みます。  お前ら〜〜 しっかり養生しとけよ! 」
パシッ ペシッ ・・・!  佐渡医師は古代兄弟のほっぺたを容赦なく張った。
「 ・・・って〜〜〜  佐渡先生 ひどいよ〜〜 」
「 う・・・先生、 俺たち、病人ですよ・・・ 」
「 あっはっは・・・ たまにはいいじゃろ。  まあ せいぜいお袋さんに甘えておけ。 」
相変わらず酒臭い息を振りまきつつ 佐渡医師は帰っていった。


「 ・・・ 兄さん ・・・・ 」
「 なんだ。 」
「 ・・・ へへへ ・・・たまには病気になるのも・・・いいかも。 」
「 進  お前・・・ 」
「 なんかさ ・・・ 母さんに看病してもらったころ、思い出すな。 」
「 ・・・ ああ ・・・ そうだなあ・・・ お前、チビの頃よく熱だして・・・
 お袋がつききりで看病してたぞ。 」
「 ・・・ そっか・・・ ふうん ・・・ 」
「 さあ いいから。 もう黙って寝てろ。 」
「 ・・・ ん ・・・ 」
兄と弟にとっては 久々の<休暇>にもなった・・・のかもしれない。



   ―  一週間後

「 さ ・・・ 二人とも大丈夫ね? 」
「 ・・・ 陰性。  はい、俺はオッケーですよ。  進、お前は? 」
「 うん ・・・・   あ  マイナス♪ やった〜〜ア 」
「 はい、 流行風邪終了ね。  おめでとう、 守君 進君。 」
検査用のキットは二人ともめでたく  陰性  を示していた。
「「 〜〜 復活〜〜 !! 」」
古代家の座敷で 兄と弟はきちっと正座をした。
「「 千代さん。  ありがとうございました。 」」
「 ほほほ・・・ いいのよ、いいのよ。 そんな・・・
 私もね、息子が二人できた気分でなんだか嬉しかったわ。 
 さ・・・ 守君、スターシアさんを迎えにいっておあげなさいな。
 進君 雪さんを褒めてあげてね、 ずっとスターシアさんとサーシアちゃんのお世話をしてくれたのよ。 」
「「 はい 」」

    ―  ぴんぽ〜ん・・・!

玄関チャイムが鳴った。 
「 は〜い?   あら・・・ 雪さん。 」
「 千代さんのお手伝いしようと思って早退してきたのですけど・・・
 あら?  守さん も 古代くんも ・・・ 起きてもいいの? 」
森雪が両手を荷物で一杯にして現れた。
「 ええ ええ。  やっと <復活> なのよ。 これで私も一安心よ。 」
「 まあよかった!  千代さん、これ差し入れです、どうぞ。 〇〇屋の草もちです。 」
「 あら 嬉しい。  それじゃ早速お茶、淹れましょうね。 」
「 うわあ〜〜 美味そうだな♪ 雪、ありがとうな。 」
「 ・・・僕さ ・・・ 甘いものはちょっと・・・・ 」
「 うふ♪ 古代君にはちゃ〜んとチーズオカキ を買ってきたわ♪ 」
「 わあ ・・・ありがとう 雪ぃ〜〜♪ 」
「 古代く〜ん♪ 」
「 おいおい・・・いちゃつくのは二人だけの時にしろ。 ったくもう〜・・・
 だけどな 雪。  コイツをあんまり甘やかすな〜  」
「 え ・・・? 」
「 コイツ ・・・ 寝ぼけてさ、 雪ぃ〜〜 なんて言ってしがみついて来るんだからな! 」
「 ・・・ 守さんってば・・・ 」
「 ― 俺だって! もう兄さんの隣に寝るのはゴメンだ!! 」
「 まあ どうして。 古代くん。 」
「 だって! 夜にさ、突然 ・・・ アイシテルって覆いかぶさってくるんだ〜〜 」
「 進〜〜〜 !! 」
「 ほほほ・・・まあまあ・・・いいじゃないの。
 守君はスターシアさんを 進くんは雪さんを熱愛してるってことでしょ♪
 ほほほ・・・ ワカモノは元気でいいわねえ。 」
「「 ち・・・ 千代さん・・・! 」」
「 さ・・・ 熱いお茶で皆で快気祝いにしましょう。  あら? 奥さんは? 」
「 スターシアさんは 防衛軍本部の託児室です。
 ずっとお手伝いに通っていらっしゃいます。 」
「 え。 スターシアが?  ・・・ 迎に行ってくる。 」
「 あ・・・守さん。 お迎えなら私が・・・ 」
「 雪。 君は進を連れて帰れ。 ふん、二人きりなら思う存分いちゃいちゃできるだろ。 」
「 兄さん・・・! 」
「 ・・・ 守さん  ! 」
守は ひょい、と片手を挙げ座敷を出ていった。
数分後、 エア・カーが官舎のガレージから勢いよく走りでていった。

「 あらあら・・・ ふふふ・・・ そんな元気があるのなら。
 二人とも完全に復活まちがいなし ね。 」
千代はにこにこ・・・見送っていた。




「 まあ 古代参謀!  ・・・ はい、奥様とお嬢様はずっとこちらにいらっしゃいます。 」
「 託児室長。 この度はお世話になっています。 」
地球防衛軍本部 別館・託児室長は泰然と微笑み答礼した。
「 ・・・ どうぞ。 こちらにいらっしゃいます。 」
「 はい。 失礼します。 」

    ― カタン ・・・

木製のドアの向こうには ―
いっぱいに差し込む陽光の中 ・・・ 沢山の子供たちが集まっていた。
はいはいの赤ん坊もよちよち歩きもイヤイヤ時期の幼子も 皆ご機嫌だった。
その笑顔たちの中心に ―

「 ・・・ スターシア!! 」
「 まあ・・ 守!?  よかった、治ったのね・・・ 」

   ― 守の愛妻が座っていた。 

「 スターシア。  ここで手伝っていたんだって? 」
「 ええ。 サーシアも一緒よ。  み〜んな私のお友達なの。 ねえ みんな。 」
 ぷぷぷ・・・・ くちゅくちゅう〜  ぱっぷぅ〜〜  あ〜あ〜・・・
沢山の声が応えた。
「 あは ・・・ 君、 モテるなあ・・・ 」
「 うふふ・・・  ねえ 守? 」
「 うん なんだい? 」
嫣然とした微笑を浮かべ イスカンダルの女王陛下はのたまう。

       「 あのね。  私  たっくさん・・・赤ちゃんがほしいわ♪ 」

「 は?  ・・・ あ  ははは ・・・ そ そうか〜〜 」
   こりゃ・・・・頑張らなくちゃならん・・・! 


 春の日差しのもと ―  皆の笑顔が満ちていた。


おしまい

2011.4.3

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