この小話は守さんとスターシアさんが地球に帰還 ( スターシアさんにとっては 到着 ) した夜のことです・・・ *************************************************: いい湯だな ばちるどさん作 官舎は内装も綺麗に手入れがしてあり、新居として申し分なかった。 最後まであれこれ手伝ってくれてた進と雪も 夜になる前に引き上げていった。 「 きみ、疲れただろう? すこし横になっていたら・・・・ 」 「 ・・・ そうね。 守は? 」 「 うん・・・ そうだな。 風呂、入ってくるよ。 」 「 ふろ・・・ ああ シャワーのことね。 」 「 うん。 あとで使い方を教えるからね。 君も休む前に入ったらいい。 」 「 ええ ・・・ありがとう、守。 」 スターシアはほんのり微笑んだが やはり疲労の色が濃い。 当然だろう・・・ 激動の日々、などという表現ではとても言い尽くせない日々の果て、なのだ。 他の人々の前では気丈に振る舞っていても 夫婦二人きりになれば疲れもどっと出てくるだろう・・・ ゆっくり風呂に漬かれば・・・ 少しはリラックスできるだろうなあ・・・ うん、 ここの風呂場は広くて気持ちいいからな 守自身 かなりご機嫌でバスタブに湯を張った。 バスタブといってもここは日本式の <お風呂>、つまり湯船に沈み、外で洗う、という形式だ。 「 風呂か・・・ 何年ぶりかなあ・・・・ 」 掛け湯をしてから ざぶん・・・と沈めば 透明は湯がなんとも心地好い。 そう ・・・ こんな風に入浴するのは。 「 ・・・ ああ ・・・ ゆきかぜ で出撃する前日 以来か・・・・ 」 ほう・・・・と吐いた溜息は あまりに重かったのか、守はいつしかうとうととしてしまった。 ― ガラガラガラ ・・・!!! 突然 バス・ルームのガラスのドアが開いた! 「 ま 守!!! 大丈夫??? きゃあ・・・・ 水が ・・・ お湯になってる!? 守! 守〜〜〜 しっかりして・・・ 」 「 ????? 」 スターシアが、 あのもの静かな彼女が長い髪を乱して飛び込んできたのだ! そして! 風呂桶の中の守を一生懸命ひっぱりだそうとしている。 「 ス スターシア???? ど どうしたんだ??? 」 「 ・・・ 守?! ああ よかった、意識がもどったのね? 今 助けるわ! 」 「 は??? 」 「 シャワーが壊れたのね? こんな こんな熱い・・・ 溺れてしまうわ!」 「 ・・・ スターシア ・・・・ 」 そう ― 異星生まれの妻は 湯舟にゆっくりと沈む・・・という習慣など知る由もなく。 「 あ ・・・は・・・。 奥さん? これはね、地球式の、いや 日本式の風呂 なんだよ。 」 「 え ・・・ 風呂 ・・?? 」 「 ああ。 気持ち いいぞ〜〜 ほら・・・一緒に入るかい。 」 夫は妻の寝間着をするり、と剥ぎ取り そのまま・・・彼女を湯船に抱きいれてしまった。 「 え・・・あ ・・・ きゃあ〜・・・ 」 「 おっと ・・・失礼。 風呂ではね〜 なにも付けないのがエチケットなのでネ・・・ 」 「 ・・・ ま 守・・・! 」 「 ・・・ いい湯 だろ? 」 「 ・・・・・ 」 妻は真っ赤になり夫の胸に顔を埋めた・・・ 湯船が広かったことに 守はこころから感謝したのである。 おしまい 2011.2.3 TOP |