この小話は守さんとスターシアさんが地球に帰還
( スターシアさんにとっては 到着 ) した夜のことです・・・
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いい湯だな              ばちるどさん作



官舎は内装も綺麗に手入れがしてあり、新居として申し分なかった。
最後まであれこれ手伝ってくれてた進と雪も 夜になる前に引き上げていった。

「 きみ、疲れただろう? すこし横になっていたら・・・・ 」
「 ・・・ そうね。 守は? 」
「 うん・・・ そうだな。 風呂、入ってくるよ。 」
「 ふろ・・・  ああ シャワーのことね。 」
「 うん。 あとで使い方を教えるからね。  君も休む前に入ったらいい。 」
「 ええ ・・・ありがとう、守。 」
スターシアはほんのり微笑んだが やはり疲労の色が濃い。
当然だろう・・・ 激動の日々、などという表現ではとても言い尽くせない日々の果て、なのだ。
他の人々の前では気丈に振る舞っていても 夫婦二人きりになれば疲れもどっと出てくるだろう・・・

     ゆっくり風呂に漬かれば・・・ 少しはリラックスできるだろうなあ・・・
     うん、 ここの風呂場は広くて気持ちいいからな

守自身 かなりご機嫌でバスタブに湯を張った。
バスタブといってもここは日本式の <お風呂>、つまり湯船に沈み、外で洗う、という形式だ。

「 風呂か・・・ 何年ぶりかなあ・・・・ 」
掛け湯をしてから ざぶん・・・と沈めば 透明は湯がなんとも心地好い。
そう ・・・ こんな風に入浴するのは。
「 ・・・ ああ ・・・ ゆきかぜ で出撃する前日 以来か・・・・ 」
ほう・・・・と吐いた溜息は あまりに重かったのか、守はいつしかうとうととしてしまった。

  ―  ガラガラガラ ・・・!!!

突然 バス・ルームのガラスのドアが開いた!
「 ま 守!!! 大丈夫???  きゃあ・・・・ 水が ・・・ お湯になってる!? 
 守! 守〜〜〜 しっかりして・・・ 」
「 ????? 」
スターシアが、 あのもの静かな彼女が長い髪を乱して飛び込んできたのだ!
そして!  風呂桶の中の守を一生懸命ひっぱりだそうとしている。
「 ス スターシア???? ど どうしたんだ??? 」
「 ・・・ 守?!  ああ よかった、意識がもどったのね? 今 助けるわ! 」
「 は??? 」
「 シャワーが壊れたのね?  こんな こんな熱い・・・ 溺れてしまうわ!」
「 ・・・ スターシア ・・・・ 」

そう ― 異星生まれの妻は 湯舟にゆっくりと沈む・・・という習慣など知る由もなく。

「 あ ・・・は・・・。 奥さん? これはね、地球式の、いや 日本式の風呂 なんだよ。 」
「 え ・・・ 風呂 ・・?? 」
「 ああ。  気持ち いいぞ〜〜 ほら・・・一緒に入るかい。 」
夫は妻の寝間着をするり、と剥ぎ取り そのまま・・・彼女を湯船に抱きいれてしまった。
「 え・・・あ ・・・ きゃあ〜・・・ 」
「 おっと ・・・失礼。 風呂ではね〜 なにも付けないのがエチケットなのでネ・・・ 」
「 ・・・ ま 守・・・! 」
「 ・・・ いい湯 だろ? 」
「 ・・・・・ 」
妻は真っ赤になり夫の胸に顔を埋めた・・・
湯船が広かったことに 守はこころから感謝したのである。

おしまい

2011.2.3

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