※注意 甘いです、大甘です、徹頭徹尾甘々〜〜〜です! ・・・だって新婚サンが二人っきりの星なんだもん。 苦手な方、どうぞここで引き返してください。 あ、新婚さんですから 当然ですがR15くらいかな〜〜 こちらも苦手な方、引き返してくださいませ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ その青き星にて ― (5) ― ― あの艦は 飛び去った。 空は ― どこまでも青く 高く 穏やかに広がっている。 たゆたう波の音を聞きつつ昨日までと寸分の違いもなく、空は 今、静まりかえっている。 ・・・ ああ ・・・ どうぞ ・・・ご無事で スターシアはじっと空を見つめ続けていた。 ほんの数分前 あの虚空の果てに彼らは飛び去った。 希望と使命と愛を乗せて ヤマトはその故郷めざし星の彼方に消えていったのだ。 岸辺にはランチが一艘 ひっそりと停泊していた。 傍らには ― 彼 がいる。 守とスターシアは どちらともなく深く吐息をはいた。 「 ・・・・ 行ってしまったわ ・・・ね 」 「 ああ 」 「 ・・・・ あの ・・・ ま 守 ・・・ 」 「 さあ。 俺たちも帰ろうか。 」 「 ― はい。 迎えのアンドロイドを呼びますわ。 」 「 いや その前に。 」 守は 改めてスターシアへ向きなおり、手を握った、そして そのまま彼は片膝を付いた。 「 ・・・? どうしたのですか。 ああ 気分がすぐれないの・・・? 」 「 違う。 スターシア 聞いて欲しい、お願いがあるんだ。 」 「 はい ・・・ ? 」 スターシアは守に手を預け怪訝な面持ちで彼を見つめた。 守はスターシアの手を握りまっすぐに彼女を見つめている。 「 スターシア。 俺と結婚してくれますか。 」 「 ・・・・!? ま 守 ・・・・! 」 「 いや、お願いです、俺と結婚してください。 スターシア。 」 守は この星の言葉で繰り返した。 「 ・・・ ・・・・・・・ 」 イスカンダルの美しき女王は ただただ幾度も幾度も首を縦に振った ・・・ 言葉が見つからない。 ぽと ぽと ぽと ・・・ 大粒の涙が守の手に降り注ぐ。 「 ・・・ ありがとう・・・! 」 「 守 ・・・! 」 守は握っていた白い手に熱く口付けをすると、立ち上がりそのまま愛するヒトを抱きしめた。 「 あ ・・・ あの。 上陸しましょう・・・・? 」 「 そうだね、花嫁さん。 」 守はちょっと笑うと ひょい、とスターシアを抱き上げた。 「 え ・・・ あ あの・・・ ? 」 「 ふふふ・・・新婚カップルがな、新居に入るときに花婿は花嫁を抱いてゆくのさ。 これは地球の大切な習慣なんだ。 」 「 まあ ・・・ そうですか。 」 「 ああ。 さ では俺の花嫁さん ・・・ 家まで行きますか。 」 「 はい。 ・・・ あ 愛してる わ 。 」 「 ああ 俺もさ。 愛しているよ、スターシア。 この宇宙で一番愛してる。 」 守は彼の花嫁を抱いたまま ゆっくりとランチを降り、クリスタル・パレスへと歩んでいった。 ある晴れた朝 ― 二人は永遠の愛を誓った。 「 ほう・・・? すごい雑木林だなあ ・・・ こっちは少し枝が空いているな。 」 守は ランプに似た灯りを目の高さに捧げた。 橙色の灯りが ほう ・・・・っと辺りを照らし出す。 足元には緑の草が足に柔らかく生い茂り 周囲は低い緑が壁になっていた。 「 本当に自然の豊かな星だなあ・・・ 動物はいないのかな。 」 ず・・・っと周囲を灯りで照らしてみたが動きまわる小さな影は見あたらなかった。 梢を透かして窓の灯りがみえる。 「 ふうん ・・・? ああ こっちが宮殿の方角か。 」 守は 最近ヒマをみつけては宮殿の周囲を歩きまわっていた。 体調も定まり、怪我は完治、宇宙放射線病からもほぼ回復した。 ・・・となると、新妻と二人きりの日々、 やりたいこと・やるべきことは山ほどあった。 「 スターシア。 ちょっと散歩してくる。 」 「 守 ・・・ 行ってらっしゃい。 ああ もう暗いからこれをどうぞ? 」 「 うん? ・・・ ああ ランプかい。 」 「 らんぷ? これはね、イスカンダルの持ち運びする灯りです。 」 守の妻は 小振りのランプのようなカンテラみたいな灯りをさしだした。 透明なカバーの中にはちらちら火が燃えているだけなのだが、不思議なほど明るい。 「 ほう ・・・ これはいいなあ。 暖かい火だ。 」 「 あたたかい火? あら火は皆暖かいでしょう? 」 「 ははは それはそうだけれどね。 こうやって燃える炎は いい。 心が温まるよ。 ありがとう、それじゃ少し散歩してくる。 」 「 はい、 気をつけて ・・・ 」 「 うん そんなに遅くならないから 」 「 ええ。 お好きな飲み物を用意しておきますわ。 」 「 ありがとう、 楽しみにしてるよ。 」 軽く唇を合わせてから 守は中庭に出た。 炎に照らしだされる庭は 昼間とはまったくちがった顔を見せた。 薬草の茂みの影に、甘い実をつける低木の根元には妖精か小鬼がいる・・・のかもしれない。 この星は本当に興味深いな ・・・ 驚くほどの先進の技術と 素朴な文化が同居している ・・・ だからこんなに穏やかな空気なのだろうか 花壇や低木の林 ― これは果樹園だった ― を抜けると外庭にでた。 ここからは自然に市街地へと繋がっているのだが 木々が自然の垣根の役割をしている。 王宮にとっては生垣、 国民にとっては街外れの森、なのだろう。 いや だった、と言うべきか・・ 「 ふうん ・・・ ちゃんと低木を選んで植えてあるのだな・・・ そうか、ここは外部を遮断する塀の目的ではないのか。 」 市街地と王宮の境、一応の目安、として森が広がっているだけらしかった。 守はゆっくりと森に入ってゆく。 夜間にまったく未知の土地を歩いているのだが不思議と警戒感は 湧いてこなかった。 梢を揺らす木々も 足元に柔らかく生い茂る下草も 懐かしくすら感じられた。 「 ・・・ 本当に不思議な星だな。 ああ ・・・ チビの頃、こんな森を歩いたな。 ああ そうだ、そうだ。 校外学習とかサマー・キャンプとか ・・・ うん うん 」 守はすこしウキウキした気分になってきた。 さらに進むと 森が開けた。 以前、落雷でもあったのだろうか、焦げた倒木があり枯れ枝が散らばっていた。 「 お ・・・ 草地か。 そうだ ・・・ せっかく火があるのだから ・・・ 」 守は灯りを置くと、枯れ枝を集めた。 やがて ― パチパチ ・・・ パチ ・・・! 灯りから取った火は枯れ枝をすぐにちゃんとした焚き火に仕立てた。 「 やあ 点いたな ・・・ はは・・・こりゃ昔のキャンプ・ファイヤー以来だぞ? 」 守は 燃え上がる炎を眺めつつどっかりと草地に腰を降ろした。 炎は ― 故郷の星とちっとも変わらず暖かく燃えている ふ ・・・ と見上げれば煙の向こうには 満天の星空が広がっている 星は ― 故郷の空と少しも変わらず優しく瞬いている。 「 ・・・ 俺は。 生きている。 この地で。 この星で ・・・ ただ一人の地球人として 」 寂寞感も孤独感も なかった。 いや むしろ喜びの活力が守の内側から湧き上がってきた。 「 そうだ、そのただ一人の地球人は イスカンダル人を妻にして。 生きている。 生きて ― 愛している、愛し合っている! 」 頬を暖める炎は 彼女の口付けには負けていた。 手に触れる苔類は 彼女の肌の滑らかさには遠く及ばない。 ゆるく纏わる夜風は 彼女の金の髪に適うわけはない。 ほう −−− ・・・! 守は熱い息を吐いた。 夜にちろちろ燃え上がる炎、 闇と炎が縺れあう中、 ・・・ 白い肢体がふいに目の前に浮かぶ。 彼はそれだけで陶酔感に満たされ 身の内が熱くなってくる。 スターシア ・・・・ ! ― 三十路もちかい大の男が まっさらな処女に魅了されているのだ。 あの艦が空の彼方に飛び去った日 その夜 ・・・ 「 ・・・ どうぞ 」 スターシアは彼女の寝室のドアに手を向けた。 この部屋、女王の寝室に 足を踏み入れた者はいない。 「 いいのかい。 」 「 はい。 ここは ・・・ 私たちの部屋です。 ・・・ 今日からは 」 「 ・・・ ありがとう。 」 守は改めてスターシアを抱き上げ、ゆっくりとその部屋に入った。 ああ ・・・・ 彼女は夫の腕の中で小さく呟いた。 「 うん? どうした? 」 「 ・・・いえ ・・・ 今朝 ここを出たのが・・・あの時の私が 夢のよう・・・ 」 「 ・・・? 」 「 哀しくて でも笑ってお見送りしなくちゃ・・・って ・・・ でも でも ・・・ 辛くて・・・ 」 「 スターシア ・・・! 」 守は 抱き上げたままの妻に軽く口付けをする。 「 ・・・ 守 ・・・ 」 そう ― 今朝、 涙と未練と諦めと。 王家の娘の誇りで全てを微笑みの下に押し込めてこの部屋から出た。 ここに戻るときは ・・・ 独り、 その覚悟は決めていた。 それが。 「 スターシア。 愛してる こころから愛しているよ。 」 「 守 ・・・ 守 ・・・ わたしも・・・ 」 彼は花嫁をそっと新床に抱き下ろした。 「 イスカンダルには なにか特別な儀式があるのかな? 」 「 特別な儀式? 」 「 ああ。 初めて愛を交わすときに ・・・ 」 「 ・・・ いえ なにも。 でも ・・・ 」 「 でも? 」 「 ・・・ きゅうっと抱き締めて キス して 欲しいの ・・・ 」 「 ・・・ 御意。 」 守は微笑んでスターシアを抱き締めた。 「 愛しているよ。 」 「 ・・・ 愛しているわ 」 唇が重なりあい、お互いの熱にお互いが酔いしれ ・・・ ― そして二人は言葉を忘れた。 蔓草模様の入った薄いブルーのシーツの上に かがやく裸身を横たえた。 真珠色の肢体の 脇に 項に 陰( ほと )に 蒼い影が溜まる。 「 ・・・・・・ 」 彼はその美しさに息を飲み、しばしじっと見つめていた そして。 彼はゆっくりと そして丁寧に眼の前の身体を愛撫し始めた。 指の先から 二の腕から。 首筋から まろやかな乳房から。 とろとろと纏わる太腿から 熱気をはらむ泉へ ・・・ 「 ・・・・・ ! ・・・ 」 天蓋のついた広いベッドには たちまち熱い吐息が満ちてくる。 白い肢体がほんのりと薔薇いろに染まりはじめ やがて熱い息に甘さがくわわる ・・・ 彼の指は 唇は 舌は ― 彼女のすべてを愛してゆく ― そして 彼が彼女の熱く零れる泉にやはり熱く漲る彼自身を沈めたとき 彼女はか細い悲鳴をあげたが それすら次第に甘い呻きにかわってゆく。 まだ稚さすら感じられる白い身体を愛してゆくうちに 守はぐんぐんと惹き込まれていった。 労わりの気持ちで愛しはじめたはずが 夢中になった。 ― いや ・・・ 自分の方が包み込まれ抱かれている と思った ・・・ こ この ・・・ 女性 ( ひと ) は ・・・ ! 満天の星が祝福する ある夜に ― 守とスターシアは共に昂みへと昇りつめ 彼は熱い愛を彼女に注ぎ込んだ。 バチ ・・・・!!! 火が爆ぜ 一瞬辺りを昼と見紛うまでに明るく照らしだす。 「 ・・・ この火が 彼女の中にも燃えているんだ・・・ 」 ふう −−−− 吐息とともに守は身体に篭った熱気をはきだした。 「 この星は ・・・ 不思議な星だ ・・・ 本当に ・・・ 」 守は玩んでいた小枝を 焚き火に放り込んだ。 パ ・・・っとまた 炎が勢いを増す ・・・ 「 ・・・ ん? 」 ガサガサ ガサ ・・・! 木々を掻き分ける音がする。 風が揺らしているのではない。 「 ・・・ うん? なにか動物でもいるのか ・・・ 」 守は立ち上がり火の照らす茂みをみつめた。 「 ・・・ 守?! 」 「 ? スターシア!! 」 低木の間からスターシアが飛び込んできた。 「 ど ・・・どうしたんだ?? 」 「 守!? ああ ・・・ 無事なのね ! よかった・・・ 」 スターシアは守に走り寄ると抱きついた。 「 ああ? ほら・・・どうしたんだ?うん? 」 「 どうした・・・って・・・ 守、 煙が見えたからびっくりして。 なにか事故でもあったのかと ・・・ 」 「 煙って ・・・ ああ焚き火をしていたんだ。 ほら・・・ 」 「 え? 」 スターシアはやっと守から身を離し、彼の指す方をみた。 「 たきび ? 」 「 うん、こうやってね、枯れ枝なんかを集めて火をつける。 」 「 まあ ・・・ 暖炉みたいね。 」 スターシアはしげしげと焚き火をみつめ そっと白い手を翳しみたりしている。 「 この星では屋外で火を炊くことはないのかい。 」 「 ええ ・・・ こういう自然の火は暖炉でしかみたことがなくて 」 ああとても暖かいわ ・・・とにっこりしている。 「へぇこの星にも暖炉があるのかい?」 「冬の離宮にあるのよ。」 「地球と同じだね。 すまん・・・知らなかったものでな、 つい ・・・ 脅かしてしまったね。 」 「 ううん ・・・ 守が楽しんでいるのなら私も嬉しいわ。 たきび ・・・ 素敵な名前ね。 」 そろ・・・っとスターシアは炎に近づいた。 長い裳裾の下から白い素足が覗く。 「 あれ 君 はだしで ・・・ 」 守は思わず彼女の足元に屈みこんだ。 ― 白い足には 擦り傷ができていた。 「 え? ・・・ ええ わたし、たいてい素足でいますもの。 今 森を走ってきたから少し汚れてしまったかしら・・・ 」 「 ・・・ 傷があるのに。 」 守は彼女を座らせると その白い足に口付けをした。 「 ・・・ 守 ・・・ 」 「 ちゃんと手当てしてください、女王陛下? ・・・ こんなに綺麗なおみ脚が。 」 す・・・っと彼の唇が裾を分けて白い脚を這い昇る。 「 ・・・あ ・・・ああ ・・・ 守 ・・・ 」 「 ・・・・・・・・・ 」 焚き火の炎に照らされてか彼女の頬はどんどん紅潮し熱を孕む。 「 ・・・ あ ! く ぅ ・・・・・・ !! 」 彼が白い脚の付け根に顔を伏せたとき 彼女の身体は弓なりにのけぞった。 「 ・・・ 守 ・・・・! 」 「 おっと・・・ 女王陛下をこんな草地に押し倒すつもりはありませんよ? さあ どうぞ。 」 彼は彼女を抱き上げ横になると、自分の身体の上に誘った。 「 ・・・ え ・・・? 」 「 お い で ♪ 」 「 ・・・・・・・・ 」 スターシアは耳の付け根まで真っ赤になり そのまま守に身を任せた。 炎と闇と 降り注ぐ星明りの中、 イスカンダルの地は愛し合う二人を優しく見守っていた。 「 ほう ・・・ これは素晴しいな。 」 守はその部屋に足を踏み入れ 感歎の声をあげた。 「 子供の頃 ・・・ ええ、まだ妹のサーシアも生まれる前に 父と訪れたことがあります。 ええ ・・・ ここですわ。 」 スターシアは微笑んで懐かしそうにその広間を見回している。 高い天井からは多くのシャンデリアが下がり、壁には凝った模様のタピストリーが掛かっている。 足元には毛足の長い絨毯が敷き詰められ 所々に別の毛皮も敷いてあった。 「 私はただただ 物珍しいくて ・・・ 駆け回って。 父に叱られました。 」 「 ふふふ ・・・ やっぱり君はお転婆さんだったんだね。 」 「 もう ・・・ 」 「 ああ 可愛いなあ・・・ 小さな君に会いたかった。 」 「 ・・・ 意地悪。 」 守とスターシアは 王家の冬の離宮に来ていた。 それはイスカンダルの北方地域、ほぼ北極にあたる荒涼とした地に建っていた。 かつては王家の離宮として夏の避暑に、そして冬には凍てつく空気を楽しみに王家の人々が 訪れたのだという。 この星の住人になってから 守は精力的にあちこちを巡っていた。 クリスタル・パレスにある装置を使い、いろいろと検索をする。 「 ・・・ この地図を見ると北の地域にも大陸があるんだね。 」 「 ええ ・・・ もともと住んでいるひとはほとんど居ませんでしたけれど。 大地は凍りに覆われていて一年中、 いえ 永遠に溶けることはないのです。 」 「 ほう ・・・ この星にも永久凍土 ( ツンドラ ) 地域があるのか。 」 「 ツ ・・? 地球にもあるのですか? 」 「 ああ。 あった、ということかな。 実際に行ったことはないけれどね。 そうだ、 二人で訪ねてみないか? ふふふ・・・ハネムーンとしゃれ込もうよ。 」 「 はねむーん? 」 「 新婚旅行のことさ♪ 結婚したての夫婦が記念の旅行をするんだ。 」 「 まあ 素敵! ええ 氷の地には王家の離宮があります、あそこへ行きましょうよ。 」 「 君が言っていた離宮だね。 それはいいなあ・・・ ははは いくらなんでもツンドラ地域で野営をするのはちょいと な。 」 「 北方専用のビークルもあったと思います。 ね、行きましょう。 」 スターシアはぴたり・・・と守の背に頬を寄せている。 ふふふ ・・・ こんな甘え方もしてくれるようになったんだな・・・ 守は背中にくっついている彼女が可愛くて仕方がない。 「 よし、 それじゃ俺たちの新婚旅行は 北方地域だ。 」 「 嬉しいわ・・・ ! 」 「 俺もだよ、スターシア ・・・ 」 手を後ろに回し守は彼女を抱く。 スターシアの白い手が彼の身体に絡みつく。 ― 北の離宮で 昼間は凍土用のビークルで氷の大地の上を散策した。 そこは芯まで凍った地だったが なぜか雪は降っていなかった。 二人はふかふかの暖かいコートに包まりソリに似たその乗り物で 凍りついた樹々の間を駆け抜けた。 凍土がこまかく削れて キラキラ・・・・冬の陽に煌きつつ舞い上がる。 「 ・・・ 綺麗ねえ・・・ 」 「 ああ 冬の華 だな。 」 「 このビークルの速さ、すごいわ ・・・ 守、上手ね ! 」 「 あはは ・・・ これは自動操縦にもなるんだな。 」 「 すてき! 守、すごく素敵・・・! 」 「 きみもとっても綺麗だ ・・・ふふふ ・・・ 冬の女王様だな。 」 守はコート中の笑顔にキスをする。 「 あん ・・・ 溶けてしまいそう ・・・ 」 「 ふふふ ・・・ どうぞ溶けてください。 君の熱さの虜になっているかな。 」 「 もう・・・・ 守ったら・・・ 」 ぴたり、と寄り添いあって。 二人を乗せたビークルは凍土の原を疾走していった。 ― パチパチ ・・・・! 暖炉で薪が爆ぜた。 スターシアは 物憂げに起き上がり、白い素肌に流れ落ちる金の髪を掬う。 火床の直ぐ前に毛皮を敷き ― その上で二人は愛し合った。 「 ・・・・・・・ 」 照明を低くおとした室内は 暖炉の炎だけが仄かに照らしている。 彼女は火影にわが腕を翳し目を見張った。 ・・・ これが わたし? 私の身体なの ・・・ 以前は 蒼白く冷たかった皮膚が 今 ・・・ 守の愛を受けその愛に馴れ ・・・ うすい薔薇色の柔らな身体へと変わっていた。 「 ・・・・ スターシア ・・・・ 」 愛を交わし、寝入ってしまったと思っていた夫がゆっくりと彼女を呼ぶ。 「 守 ・・・ 起こしてしまった? 」 「 いや。 起きていたから ・・・ 」 「 ・・・ そう? ・・・ 私も。 なんだか身体が火照ってしまって ・・・ 」 炎の照り返しをうけ、薔薇色に染まった妻の身体を守は目を細め眺めていた。 そして 今度ははっきりとした口調で言った。 「 スターシア。 子供をつくろう。 」 「 ・・・ 守 ・・・ 」 「 この星が滅びるまで まだ何千年もあるのだろう? それならば ― この地で 俺たちはまたイスカンダルを繁栄させよう。 地球も落ち着けば いつか進たちもまたやってくるさ。 」 「 守 ・・・! そうなれば・・・どんなにか・・・! 」 「 なるさ。 きっと。 だから 俺たちは子供をつくろう。 」 「 ・・・・・・・ 」 スターシアは頬を染めたまま守の胸に顔を埋めた。 守はスターシアの金の髪に顔を埋めた。 古代 守は訓練生時代から モテた。 引く手数多 ・・・ 寄ってくる女達は沢山いたが しかし決まった人はいなかった。 一見派手な外見、そして宇宙戦士という華やかな職業 ― 上辺だけに引かれた相手は 実際は芯が堅く真面目な彼を知ると、皆、去って行った。 「 お前はいつも振られてやがるなあ! 」 「 知るか〜〜 俺のせいじゃないぞ。 」 親友の真田はそんな彼を見て揶揄し笑いあったものだ。 その ・ 古代守は 今、この星で。 こころから敬愛する女性と愛し合う素晴らしさを知り、陶酔し 新妻に夢中になっていた。 陽射しに華やかさが増せば 二人で緑の中を歩き回った。 クリスタル・パレスの背後にはなだらかな丘陵地帯になっていた。 「 こっち ・・・ こっちにね、素敵なものがあるの。 」 「 待ってくれ。 ふう ・・・君は足が速いなあ。 」 守に先立ち スターシアは裳裾をすこしだけ摘まみすたすたと丘を上ってゆく。 草地を抜けると細い流れが見えてきた。 「 お。 川か? 綺麗な水だな。 」 「 ねえ こっち。 ・・・ ほら ここよ。 」 「 はいはい。 本当に女王陛下はお転婆でいらっしゃる。 」 「 もう〜〜 ね、ここ。 」 「 どれどれ。 綺麗な花でも咲いているのかい。 」 「 花もあるけれど ・・・ 」 「 ・・・・ ああ ・・・ 泉? 」 草地の陰に 小さな泉があり、滾々と澄んだ水が湧き出ている。 「 これが この星の水の源ですわ。 すべての水の源の泉です。 」 「 触れても いいのかい。 」 「 はい。 すべての人のための水ですもの。 」 「 そうか ・・・・ 」 守は泉に端に片膝を付いた、そしてそっと両手でその透明な水を掬った。 「 ・・・ この水に誓う。 この星をそしてこの女性 ( ひと ) を愛し護ると。 」 「 泉の流れに誓います、 この男性 ( ひと ) を愛し共に生きることを ・・・ 」 俺とスターシアは ― この星の礎となる。 守は 心を決めていた。 どんなことがあっても この女性を、そしていずれは生まれてくるであろう子供を護る と。 そして。 護るだけではない、絶対に生き抜く。 死にはしない。 絶対に。 いま 彼は。 あの老艦長が自分に投げてくれた言葉を改めて噛み締めていた。 死ぬな ― その言葉の重みを 古代守はしっかりと受け取った。 その青き星で二人は人生のうちで一番幸せな日々をすごした。 それは これからの試練へ力を蓄えておけ、と大いなるものが与えてくれた休暇だったのかもしれない。 その青き星にて生まれた愛は いつまでも消えることはない。 2011.6.10 BACK TOP |