(2) 


  かつ〜〜〜ん ・・・・  こつ〜〜〜ん ・・・・

  あはは ・・・ 行くよ〜 晶子さん!    ええ よくってよ  きゃ・・・

  こっつ〜〜ん ・・・・ かっつ〜〜ん ♪

ロビーの隅っこでは相原と晶子が ( 卓球 ではなく! ) ピンポン を楽しんでいた。

「 だ〜〜〜  もう甘ったるくて蕁麻疹 でそう〜〜〜 」
しばらく観戦していた島が 背中をぽりぽり掻きつつ離脱してきた。
「 なに? お〜〜〜 卓球台があるのか! おい 島 〜 久し振りに! 」
「 やるか? お〜〜し。   お〜い激甘カプ〜〜 ちょいと選手交代してくれ〜 」
風呂あがりにどやどややってきた進が割り込んだ。
「 あら 古代さん・・・・ どうぞ どうぞ。 」
「 晶子さん。  売店でコーヒー牛乳でも飲みませんか。 」
「 ほらほら〜〜 激甘は二人の世界にど〜ぞ。  おし ゆくぞ 島〜〜 」
「 ふん。 手加減なんぞしないからな ! 」
「 望むところさ! 」

   ガツ !  ドタバタ !  ジタバタ!  ゴン。  ドサ。 

「 はへ〜〜〜〜〜 ・・・・ やっぱちっせ〜〜な〜〜 」
「 ああ ・・・!  こりゃ 狭すぎるぜ〜〜 」
選手だけがやたらと走り回り肝心のピンポン玉は ほとんど場外に転がっている。
「 なんだ なんだ?  卓球やってるのか。 」
「 あ 兄さん。  うん、久々なんでさ〜 どうも勝手が ・・・ おっとぉ〜〜 」
「 やぁッ !!  ・・・ あ〜〜 でかすぎた〜〜 」
守はしばらく弟たちのゲーム・・・というよりもドタバタを眺めていたが呆れ顔だ。
「 なんだ そりゃ。 お前ら 力尽くで打ってるだけじゃないか。 」
「 いい運動になりますよ。  腹減らしといて〜〜 大宴会♪ 」
島も 進と同様にただただラケットを振り回し玉と戯れている。
「 ふん ・・・  よ〜し それじゃ一応ちゃんと勝負してみよ〜〜 俺が相手だ! 」
「 え〜〜 兄さんってば卓球なんてやるんだ? 」
「 お。 知らないな? この俺の勝負強さを〜〜 」
「 なんです〜〜 勝負って。 」
 どやどや ・・・ 第ニ陣の男性たちが露天風呂から上がってきた。
「 あ 〜 四郎君♪  あのね、卓球台があってね ・・・ 」
サーシアが ととと・・・っと加藤四郎の側に寄ってゆく。
そんな彼を 地獄の使者?のよ〜な声が追いかけてきた。
「 ・・・  おい。  加藤、 勝負しろ。 」
「 ? なあに〜〜お父様ったら。 ヘンな声ねえ〜  四郎君と卓球したいの? 」
「 え ・・・ あ あの〜〜俺は見学してますから親子水入らずで 」
「 もう一度言う。 勝負しろ 加藤。 」 
 ずい ・・・ ってラケットが四郎の目の前に突き出された。
「 本気だぞ。  ― お前が勝ったら  なんだってもってけ。 」
「 ・・・ お相手いたします。 」
四郎はこっそり溜息をつき ラケットを手にとった。

 ― そして 以下が卓球大会? の戦果報告である。

四郎 Vs 守
現役ばりばりの戦闘機乗りの俊敏は判断に さしものスペース・イーグルも敗退を期した。
「 うっく・・・ くそ〜〜  ええい、もってけ! 俺の娘〜 くれてやる〜〜〜!  」
「 うわあ〜〜〜 ありがとうございますっ !!! 」

四郎 vs ユキ 
ほぼ互角で 勝負はオアズケとなった。 ともに目が利く二人なのでラリーが延々と続いたのだ。
「 ねえ 陛下・・・いや スターシア義姉さん! オレとやりましょう! 」
妻の戦いぶりを眺めていた進が 張り切って挑戦した。
「 まあ〜〜 進さん。 わたくしなんかとてもお相手できませんわ。 」
「 いえいえ ・・・ 楽しめればいいんですから。 さあ どうぞ。 」
「 そうですか? では ・・・ お手柔らかに、お願いしますね。 」
スターシアはにこやかにラケットを手んした。
  
進 vs 陛下  
イスカンダルの女王陛下は  玉の侵入角から跳ねる方向を瞬時に計算! 
どんなショットも確実にそして的確にレシーブされ  古代戦闘班長殿は自滅した。
観戦者からやんやの拍手が沸き起こったのは当然であろう。
「 くっそ〜〜 完敗です〜〜 」
「 まあ ・・・ 私、 ただ受けていただけですのに。 」
浴衣の着付けもほとんど乱さずに 女王陛下は艶然と微笑まれている。
「 いやあ〜〜・・・ スターシアさん! 科学局の局長として是非是非貴女をスカウトしたく
 なりましたよ!  素晴しい・・・! 」
「 真田〜〜 勝手にリクルートするなよ〜〜
 しっかし 進〜〜 お前な〜〜 ほっんとに ・・・ 出たトコ勝負なヤツだなあ〜 」
「 ふ ふん ・・・ オレは基本戦艦乗りなの!  こういう原始的は作業は苦手なの!
 確実に打つにはターゲット・スコープがないと〜〜 」
「 ・・・ は ・・・! 」
「 きゃ〜〜〜 でもすごく楽しかったわア〜〜♪ ねえ 四郎さん? 」
「 え  あ は はあ・・・ えへへへへ・・・・ 」
サーシアは上機嫌で もうおおっぴらに四郎の側にくっついている。
「 ・・・ うう〜〜〜  おい! 皆 〜〜 飯にするぞ〜〜  」
古代参謀は < ご一行様 > に声をかけた。

「 あの〜 皆様、 お食事は大広間でどうぞ。  」
ぞろぞろと大部屋に戻ろうとしていると 番頭さんが声をかけてきた。
「 え? あの 俺たちの部屋で充分ですから・・・ 」
「 いえいえ ・・ お連れ様もお見えになりましたし。 大広間にご用意しましたので どうぞ。 」
「 はあ・・・ お連れ?  いや なにかの間違いじゃないですか? 俺たち 大広間で
 食事するほどの人数じゃないですが ・・・ 」
「 どうぞご遠慮なく。  当旅館の自慢の部屋ですので 」
「 守 ・・・ ともかく案内していただきませんこと? 」
「 ああ そうだな ・・・  あの お願いします。 」
「 はい。 皆様〜〜〜 こちらへどうぞ。 」
< ご一行様 > はぞろぞろとロビーから移動した。

    ガラ ・・・  襖をあければ  ―  居並ぶヒト ヒト ヒト・・・

「 !?  な  なんなんだ??  え。 富山に麻上に ・・・ 納谷に広川まで ・・・ ? 」
「 あら 大勢いらっしゃいますのね。 皆 守のお友達なの? 」
「 ・・・お おともだち ・・ってこともないが ・・・ 」

「「  古代参謀〜〜〜〜  お待ちしてました〜〜〜〜  」」
 ― 大広間には ヤマトの元クルーを始め、参謀本部付きの若い士官たちがずらり揃っていた。
「真田!謀ったな!!やっ島お前か!!」
一瞬 あっけにとられ呆然とした守の脇から涼やかな声が 響いた。
「 皆様 こんばんは。  ご一緒できて嬉しいですわ。 」

   わ〜〜〜〜〜〜〜 ♪♪

女王陛下のロイヤル・スマイルに 大広間中が湧き立った。
「 ねえ 守。 楽しいですわねえ〜〜  」
「 ・・・ あ  ああ  ( くそ〜 )  皆 ・・・ ま 待たせたな ・・・ 」
守は引き攣った笑顔で 広間に入っていった。

   ―  え〜〜〜い  忘年会だ!  忘年会旅行だ〜〜  うん そうしよう!

「 森君 !  森主席秘書官。 」
騒ぎに紛れ 守はユキを差し招いた。
「 は  はい?? 」
「 ・・・ この度の件は  参謀本部の忘年会 として予算計上、伝票を回しておくように。 」
「 は。 了解いたしました  古代参謀。 」
「 経緯については ― 守秘義務を敢行するように。 」
「 ― 了解。 」

   ・・・ これで年度末会計監査を 切り抜けることができるのだろうか??

「 そ〜〜れでは!  え〜〜〜 僭越ながら自分が音頭をとるので 」
守はすっくと立ち上がると  ビール波々〜〜なグラスを取り上げた。
もうこうなったら自分でも徹底的に楽しむ! それが一番なのだ、と腹を括った。  そして ―

      今年一年 ご苦労さんでした!   かんぱ〜〜〜〜い !!

 かんぱ〜〜〜〜い !!!  わあ〜〜〜〜 ・・・ カチン カチン カチン♪
そこここでグラスが鳴り 笑顔が弾け ― あとはもう ・・・滅茶苦茶の大騒ぎが始まった。
無礼講は当然で 皆で山海の珍味・美味を大いに楽しむ。

「 まあ これはなんですか? 」
「 車海老といってな ・・・ ほら 〇〇 ・・と似た味だろ? 」
「 ・・・ あらあ〜〜 ほんとう♪ 美味しいわ  」
「 なあ よく宮殿の庭の川で獲ったよなあ 」
「 ええ ええ  ・・・ 美味しい♪  味はそっくりですわね。 」
守とスターシアは相変わらず二人でいちゃいちゃしている。
もう周囲は慣れっこなので < 微笑ましい視線 > を送っていたが ・・・
二人ともすぐにあちこちからひっぱりだことなりつつも 守はがっちり愛妻のガードをしている。

  やがて宴もたけなわとなり <お約束> の マイクが回りはじめた。

「 は〜い!  いっちばん!  森 ユキ、歌いま〜〜す ! 」
ユキが浴衣をきっちりと着直し するするとステージの中央に出てくる。
わ〜〜〜〜 !  拍手の中 なんだかえらく古風な曲が始まった。  イントロも長い。
「 ん〜〜〜〜?  おい 進。  なんだ〜〜 この曲 〜〜〜 」
「 し〜〜 兄さん。  ユキの十八番の持ち歌なんだ〜  すげ〜〜〜大ナツメロでさ・・・ 」
「 へえ ・・・ そういう趣味だったのかあ〜 」
「 守。 静かに聞きましょう。 ユキさんのお歌なのでしょ? 」
「 え  あ  ああ ・・・  」
ユキはマイクを手に 舞台 ( 大広間には簡単な舞台があった ) 中央に進むと
想い入れたっぷりな表情でずず〜〜〜っと客席を視線でナメる。

〜〜〜〜 ♪♪♪  なにやら短調のイントロが聞こえてきた。 物悲しいメロディだ。

「 まあ ?  」
スターシアはちょっと意外な顔をしている。
「 不思議な ・・・ 曲ですのね?  あまり聞いたことがありませんわ。  」
「 え? ああ あのですね〜〜 これってすごく古い古い歌なんですよ。
 ずっと歌い継がれたきた・・・って感じで ・・・ ユキが得意なんです。 」
進は義姉に熱心に説明している。
「 まあ そうなんですの? 伝承の歌、なのですね。 」
「 でんしょう?  え え〜〜と ・・・ まあ そんなモンかな?  あ 始まりました〜〜 」

  〜〜〜♪♪  ♪♪ 〜〜〜   ユキはマイク片手に熱唱している。

時に眉の間に縦シワをつくり、 虚空に手を伸ばし ・・・ 遠い目をして ― 歌う!
「  ぴゅ〜〜〜 ぴゅ〜〜〜〜  いいぞ〜〜〜  ユキィ〜〜〜 」
「  みやっこ・・・! じゃなくて ゆっきさんっ!! 」
もう皆 かなり出来上がっていて 方々から掛け声、というか野次が飛んでくる。
ユキは まうすます熱唱〜〜 歌とともに振りにも感情が篭ってきた。

   「  ・・・ まあ ・・・! 」

始めはにこにこ聞いてい女王陛下、 歌が進むにつれだんだんと表情が険しくなってきた。
そして ついに ―  ユキが歌い終えやんやの喝采をうけている最中に つつつ・・・っと
義弟の側ににじり寄った。
「 進さん。  ちょっとこちらにいらしていただけいません? お話があります。 」 
「 はへ? なんれすかァ〜〜 義姉さァ〜〜ん  」
進はもうかなり  < 出来上がって > いるので 呂律が回っていない。
「 ここにお座りなさい。 」
「 ・・・ はへ? 」
「 進さん。 これはあなたの義姉として言わせていただきます。
 もっと奥様を大切になさい。  どうしてセーターを着てさしあげないのです?  」
「 はへ?  せ  せーたー ??? 」
「 そうです。 せっかく せっかくユキさんが編んでくださるのに ・・・!
 着てもらえない ・・・ なんて。 ユキさんが可哀想ですわ。 」
「 はへ? ・・ ユキのヤツ 編み物なんてできっかァ?  」
「 それに! どうして暖房装置を修理しないのです? 」
「 はへ?  だ だんぼうそうち?? 」
「 寒さ堪えて・・・ なんて!  風邪を引いたらどうするのですか!? 」
「 は ・・・ はあ ・・・ ( ウチのヒーター ・・・ 壊れてたっけか? ) 」
「 ともかく。  今回はわたくしの胸に収めておきますが。 
 またユキさんと嘆かせたら 守に報告しますから。  よろしくって? 」
「 ・・・ は ・・・ァ ・・・・  す すいません〜〜〜 」
か〜なり < 出来上がっている > 進クンには なにがなにやらさっぱり・・・らしかった。
スターシアは 義弟に一本釘を刺すと、また守の側に戻っていった。
「 ・・・ ひえ ・・・ なんか ・・・ 義姉さん おっかね〜〜〜 」

カラオケ大会はますます盛り上がる。
ユキの次には 相原が勢いよくマイクを握った。
「 にっばん!  相原〜〜〜 歌います! 」
「 よ〜〜〜 いいぞ〜〜〜 」
  ― またまた物悲しいメロディーが流れ出した。

    〜〜〜 真っ赤なすか〜ふ〜〜〜♪   たび〜〜立つ〜〜〜

これはもう全員がいい気持ちになり相原の熱唱に耳を傾けた。 彼はなかなか深みのある声の
持ち主で さすがに耳がいいので音程もしっかりしている。
 
    ららら ・・・ 真っ赤なァ〜〜〜  ・・・・!

朗々と歌い上げこれも盛大な拍手をもらった。
「 わ〜わ〜〜〜 いいぞォ〜〜〜 防衛軍の歌姫ェ 〜〜 」
「 げははは ・・・ 姫 じゃね〜だろ〜〜〜 ちゃんと < 姫 > がいるってよ! 」
「 ちげ〜ね〜〜〜  ひゅ〜 ひゅ〜〜〜 お熱いねえ〜〜 」
相原は拍手に笑顔で応え 席に戻ってきた  ―  が。
「 相原さん。 」
彼の目の前に 真剣な表情の女王陛下がきちん、と座っていた。
「 は  はい ?  あのゥ〜〜〜〜  なにか ・・・ 」
思わず自分も正座した元 ・ 通信班長ドノに スターシアは困った表情をしている。
「 ・・・ 相原さん。  ご結婚前なのに他の女性のことを歌うのはどうかと思いますわ。 」
「 ・・・ は???? 」
「 以前に お付き合いなさっていた ・・・ この方とは。 
 イスカンダルから戻った後、きちんと別れたのでしょうね? 」
「 ・・・ ひ ??? 」
「 あなた方のことは ・・・ いろいろ大変だった、と守から聞きました。
 でもね、 相原さん。 あなたさえしっかり晶子さんと守ってゆかれれば 周囲は自然と
 余計なことをあれこれ ・・・言わなくなるものですわ。 」
「 ・・・ ふ ??? 」
「 ですから。 ムカシの方のことは きっぱりとお忘れなさい。 
 赤いハンカチなんか 捨てておしまいなさいね。  晶子さんにシツレイですわ。 」
「 ・・・ へ ・・・ ほ?  は  はあ・・・ 」
「 わかってくださればいいのですよ。 どうぞ 晶子さんとお幸せに・・・ ね♪ 」
「 はは 〜〜〜〜 」
相原はわ〜〜けもわからずひたすら平身低頭・・・している間に スターシアは席を立ってしまった。
「 ・・・ な んか ・・・  よぐわかんねェ〜〜〜 な? 」


「 スターシアさん。  こちらで熱いお茶を頂きませんか?」
杯盤狼籍 ・・・ な中、 藤堂晶子がスターシアやユキに声をかけてきた。
「 まあ いいですわね。  私、 お茶って大好きなんですの。 」
「 ここのお茶、とっても美味しいですね。 さすがに お茶の産地だけありますわ。 」
「 そうですの? お茶・・・って こちらの地域で取れるのですか? 」
「 はい。 こちらは昔からお茶の葉の一大生産地だったのです。
 復興してまず一番にお茶の木を植えた・・・って 聞きます。 さあ ・・・ どうぞ? 」
晶子が鮮やかな手つきで 熱々のお茶を淹れ二人に進めた。
「 うわあ・・・晶子さん 上手ね〜〜 私、いっつも零してしまったり ・・・ 」
ユキが湯呑を手にとるのも忘れて感心してながめている。
「 本当・・・ とても美しい動きですね。  ・・・ いただきます。 」
「 いただきます ・・・・ あちっ! 」
「 どうぞ。 あら ユキさん、気をつけて・・・ 煎茶は熱々で、ですから・・・ 」
「 え ええ ・・・  あ  おいし〜〜〜〜 」
「 スターシアさんも どうぞ。 」
「 ええ ・・・ あの、ごめんなさい、私熱いものって本当に苦手で 」
「 あら大丈夫ですわ、こうやって ふ〜〜〜〜・・・ってさまして召し上がりください。 」
「 ・・・ ふ〜〜〜 ・・・   あら ・・・ 飲めそう。  ・・・ ん〜〜 美味しい! 」
二人の笑顔に 晶子はほっとして笑顔の仲間入りをした。
「 口の中がいい香り ・・・ ふ〜〜〜ん ・・・  」
「 本当ですね。 晶子さん、 お茶の淹れ方を教えてください〜〜 」
「 ユキさん。  温度をきちんと測れば 誰でも美味しいお茶を淹れられます。 」
「 そう?  それじゃ ・・・ 私 < ユキのコーヒー > 汚名挽回のためにも!
 <美味しい煎茶の入れ方 > をマスターします! それでもってね、古代君を
 びっくりさせてやるの〜〜 」
「 うふふふ。  ユキさん、頑張って。 わたくしも守に喜んでもらえそうですわ。 」
「 あら。 なんだかお二人にあてられてしまいましたわ。
 お二人とも お仲がおよろしくて 羨ましいです ・・・ 」
「 や〜〜だ♪  も〜〜 世紀の恋♪ で一緒になるのはだあ〜れ? 」
「 そうそう ・・・ お熱いのは晶子さん達の方でしょう? 」
スターシアとユキはからかい半分なのだが ―  ふ・・・っと晶子の表情が変わった。
「 ・・・?  晶子さん ・・・? 」
「 お二人が ・・・羨ましいです ・・・
 私は ・・・ 義一さんが通ってきた <世界> を知りません。
 彼と同じ世界を共有することが出来ませんでした。
 皆さんはいいですね ・・・ お相手の方と一緒に空の彼方にいらしたのですもの・・・
 生死を共にする時間を過していらしたのですもの ・・・ 私は ・・・  」
いつもにこやかな晶子が 俯いて言葉を途切らせる。
「 それは ― 」
「 晶子さん? わたくしをご覧になって。
 守 も 私も ―  出会うまで何一つ共有すること は持っておりませんでした。 
 お互いに何にも ・・・ 全く相手のことは知らなかったのすよ。
 でも これからずっと一緒に同じ世界を生きてゆくのです、 それでいいじゃありませんか。 」
「 ・・・ え ・・・ 」
「 わたくしは守と これからの時間、ゆっくり一緒に過してゆけばいい、と思ってますわ。 」
「 スターシアさん・・・ 」
「 そうよ〜〜〜 次の新婚さん♪は あなた達ですからね〜〜 
 ほらほら そんな顔・・・・ お化粧直していらしたら?  そろそろデザートがでますよ? 」
ユキに促がされ 晶子はそっと大広間から滑りでた。

   ぱたぱたぱた ・・・  誰もいない少しひんやりする廊下 ・・・ 軽い足音が追い掛けてきた。

「 晶子さん 晶子さ〜〜ん ? 」
「 あら なんですか  サーシアさん。 」
「 うふふ ・・・ あのねえ。 ナイショで教えてあげるね?
 ウチではね。 お父様が一番偉ぶっているけど。 何でもお父様が決めることになってるけど。
 本当はねえ〜 いつだってなんだって結局はお母様の思い通りになっているの。 」
「 ま まあ・・・ 」
「 で ね? そのコトをお父様はぜ〜〜んぜん気がついていないのよ〜〜 
 うふふ ・・・ アタシも将来、そうするつもり♪ 」
「 それ いいですわね!  ふふふ ・・・ 私も見習いますわ。 」
「 そうよ〜〜 叔父様んちなんて初めっから完全にそうでしょ? 」
「 ふふふ ・・・ そうですわね。 それが夫婦円満の秘訣・・・かも。 」
「 でしょ♪ 頑張りましょうね〜〜 晶子さん? 」
「 ええ ええ サーシアさん。 」



 さて 大宴会もめでたくお開きとなり ― すでに轟沈しているメンバーもいたが 
< ご一行様 > は それぞれオトコ部屋と女部屋に分かれて休むこととなった。
「 ・・・うん  まあ〜〜 今夜は ・・・ それぞれ < うまく > やれ。
 蒲団部屋に消えても・・・ 目を瞑る! 」
幹事さん? の 温情ある判断に各自感謝しそれぞれ散っていった。


「 ・・・ ふう ・・・  ちょいと酔い覚まし、してくるか ・・・ 」
夜中すぎ  守は旅館の屋上テラスに上ってみた。
平屋造りとはいえ 断崖に建っているので屋上はかなり高い位置にあった。
「 ほう ・・・  海も空も両方見えるんだな。 」
満天の星空に やがてゆっくりと大きな月が中天へと昇ってゆく。
真っ暗な海には 遥かに漁火が散り、それは星々と見分けがつかない。

    ・・・ お   う〜ん ・・・ なかなか心憎い演出だなあ・・・

あの星の彼方に赴き闘い ―  かの地で乙女と出会い愛しあった。 
そんなことが夢かと思われしまう。

    俺がここにいることが 夢 なのかもしれないな・・・

月見亭へ  と書かれた標識を見て、ぷらぷら辿って行くと ―  人影があった。
  いや  なにかが 東屋の先端で煌々と照らす月光の中に 立っている。
その姿は白銀の光に包まれ 今にもふわふわ ・・・ 空に舞いあがる  かに見えた。

     て  天女 ・・・ ?   い  いや ・・・ あれは。

天女が ふと振り返り満面の笑を守に見せた。
「 ・・・ スタ ・・・ シア ・・・ ? 」
「 守 ?  お月様がとてもきれい ・・・ 」
「 ・・・ !  」
その神々しいまでの微笑みに あまりの美しさに どきん! と彼の胸は疼く。
「 スターシア ・・・!  」
彼は不安に駆られ思わずその天女に駆け寄り きゅう〜っと抱き締めた。
「 ・・・ どうしたの 守 ・・? 」
「 あ   い  いや ・・・ 脅かしてスマン。
 なぜか ・・・ 君がこのまま ひらひら・・・ 天に戻ってゆきそうな気がして ・・・ 」
「 天に? まあ・・・ ふふふ・・・ ステキね ・・・ 」
「 ・・・ ああ ああ  君ってひとは ・・・ ! 」
連れ添ってもう かれこれ10年近く。  お互い知り尽くした  <古女房ドノ> である。
しかし  ― この愛しさは なんなのだろう。

     スターシア ・・・!  ああ  スターシア ・・・!

守は身体の芯を貫くほどの 強く深い想いに全身が痺れてしまった。 
「 守 ?  どうなさったの。 」
ふわり。  白い手がそっと彼の頬に触れてきた。

     ああ  ・・・ ああ ・・・ なんて  なんて愛しいんだ ・・・!

ほとほとと じんわりと ― 強張った身体が温かく潤びてゆく。
「 スターシア ・・・ 俺は絶対に君をおいて逝ったりはしない。 どんなことがあっても。
 這い蹲っても 君の元に還る。   」
「 ・・・ 守 ・・・ 」
「 いつか ある日、 ずっとずっと先のある日 ・・・ もし 君が先に逝ってしまったら。
 俺はすぐに追い駆ける。  俺は 絶対に君を一人で逝かせたりは  しない。 」
「 ・・・ 守。 わたくしもいつも守の側におります。 ええ どんな時でも。
 たとえ肉体が離れてしまっても  魂は永遠にお側におりますわ。 」
「 ・・・ スターシア ・・・! 」
「 だから  天に昇ってゆくときも一緒にしましょ。 」
遠い星からやって来た かぐや姫 は  艶然と微笑んだ。


       守   ・・・ 愛してるわ  守 ・・・!

       スターシア ・・・!


あの時の あの二人の心からの叫びは ― 今もいつもこれからも。 
二人の心の中で響き続けているのだ  ・・・  そう ・・・ 永遠に ・・・





「 ふ ・・・ たまにはスターシアとサーシアの顔がみたいからな。 」
たまたま 銀河系付近を通ったデスラーは 地球の某所に連絡をいれてみた。
全くの個人的な用件なので 総統御自ら回線を開く。
「 ・・・ え〜と?  ・・・ ああ これだな。 」
地球防衛軍本部の 大代表 NO. ・・・ 279−1111 〜〜 
しばらく待ったが難なく繋がった。 
「 ・・・ あ〜 こちらは   ん? 」
総統の耳に入ったのは ― 

 ぴんぽんぱんぽ〜〜ん♪

   お電話 ありがとうございます。 本日の営業は終了いたしました。
   また明日のご来店をお待ちもうしあげております。  

                                   ぴんぽんぱんぽ〜〜ん♪

素っ気ない自動応答音声なのだ。
「 番号の変更でもあったのか?  仕方ない、アレを使ってみるか。 」
彼は訝しげに思いつつも しばらく振りで執務机の端にあるホットラインを手に取った。

    trtrtrtrtrtrtrtr  〜〜〜〜    trtrtrtrtrtrtrt 〜〜〜

ややあって ―  やっと繋がった。   カチャ。 

「 ―  なんだ。 」
不機嫌な声が返ってきた。
「 ???  こちらデスラーだが。  このラインも錆びてしまったかと思ったぞ。 」
「 総統。 藤堂だ。 あ〜 申し訳ないが。 今、 取り込み中でな 」
「 ! またどこぞのヤツラが攻めてきたのか!? 」
「 いや。  ― 誰もおらんのだよ! 」
「 は? 」
「 ワシ以外 誰もおらんのだ。  頼む、今日は攻めて来んでくれ! じゃあな! 」
「 は?  」
   ツ −−−−−− ・・・・   ホットラインは無情にも切れてしまった。


       二十世紀 ・・・ ウ は宇宙船の ウ  だった。 
 
       そして   二十三世紀には  オ  は温泉の オ♪ 


あとがき ****

 4126 って?  それはね・・・ 昭和な子なら み〜んな知ってる〜〜

    イト〇に行くなら   は 〇 や ♪♪     電話 は 4126 ♪♪

 のアレです。   で  オ − 4126 作戦 は無事終了となったのであります。


2013.10.21

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