ヒミツ
                byめぼうき



「すごいわ〜! どの紙面も一面トップよ、母さん。」
「どれどれ。こりゃあ・・・。」
携帯端末でオンライン新聞を見ていた娘が、母親に端末に映し出された紙面
を見せた。そこには、さらさらと長い金髪の女性と地球連邦大統領、それに地
球防衛軍指令長官の姿があった。
「夕べのTVでお姿は拝見したけれど、あらためて拝見すると本当に綺麗な人
だねぇ。この世の人とは思えないね。」
「いやだぁ、母さんったら。この世の人だってば。」
娘はくすくすと笑った。
「そうだけどさ。なんだか信じられないじゃないか、この方が地球にやってきた
なんてさ。」
「そうねぇ。でも本当にいらっしゃったのよ。あたしは嬉しいわ〜。」
「そうだね、嬉しいね。ん・・・?」
「どうしたの?母さん。」
「あんた、この、ここの写真拡大してくれるかい。」
「いいわよ。でもどうしたの?」
「ちょっとね・・・。」
娘は母親が指差した新聞に掲載されているいくつかの写真のうちの一枚を拡
大して母親に見せた。
「・・・・・・!まさか???ありえない。いや、でも、でも・・・まさか・・」
「どうしたの?母さん」
「幽霊が映ってる。」
「は?」
娘は一瞬母親のアタマがおかしくなったのかと心配になった。
「ちょっと母さんしっかりしてよ!」

・・・・守君!・・・・・

母親は、それこそガミラスとの戦いで、この世の人ではなくなった知人の名前
を心の中でつぶやいた。




「らっしゃい、らっしゃい 今日は本物のほうれん草が入荷したよ。しかも安
い!どいうだい、奥さん。」
「きれいな緑だねぇ〜。孫に食べさせたいね。一把ちょうだい。」
「まいどありぃ。このトマト、一つおまけしとくよ、試験栽培もの。後で味の感想
きかせてくれ。ソレ条件でこっちに流れてきたんだ。」
「ありがとーー。」
大沢千代は南町商店街で買い物をするのが好きだった。
発展途上のこの町はごちゃごちゃしていたが、大勢の人が行き来し、活気が
あった。それに・・・
千代は手に持った籠の中に入っている先ほどの八百屋のオヤジがくれたトマ
トを見てにっこりした。
それに、なんといっても南町にはヒトとヒトとの温かな交流があった。
そんな南町の空気が千代は大好きだった。
「千代ちゃん」
後ろからふいに声をかけられ、千代が振り返るとそこに、よ〜〜く見知った顔が
あった。
「きみちゃん!」
「買出しかい?千代ちゃん。」
「まぁね。きみちゃんは?」
「あたしゃ、ヒマつぶし。」
「いいねぇ〜〜有閑マダムって」
「だれがマダムだって?」
あはははははと二人は笑った。
二人は、南町から少し離れた同じ町内に住む、昔なじみの友達同士だった。
50代後半で大柄な千代に、60代半ばの細くてひっつめ髪のきみちゃん。
外見が対照的な二人は、とてもいいコンビだと周囲の人間は見ていたが、当
人同士はそれほどでもない、とさばさばしていた。
「千代ちゃん、仕事見つかったかい?」
「まぁ、ぼちぼち。」
千代は以前、宇宙戦士訓練学校寮の寮母をしていたことがあった。
ガミラスの遊星爆弾の攻撃が激しくなり始めた頃、地球市民は地下避難を余
儀なくされ、千代は職を失った。地下には余裕がなく、寮が建設されることはな
かったからだった。ガミラスの脅威が去り、人々が地上で暮らし始めた頃、
今度はスーパーの惣菜売り場でパートとして働き始めた千代だったが、
彗星帝国の攻撃によって、そのスーパーが破壊されてしまった。
たまたまシフト日ではなかったために千代は命拾いをしたのだった。
そんなわけで、今千代は求職中の身だった。
自宅近くに住む娘家族と交流をしつつ、千代はつつましい生活をしていた。
千代の夫は地下都市時代に病気で亡くなっていた。
「最近ちょっと腰の調子がよくなくてね。まぁ様子見ながら仕事を探してるって
わけ。」
千代は苦笑いしながらきみちゃんに言った。
「整骨院にいった方がよくないかい?」
「ああ、○○さんのところに通ってるよ。」
「○○整骨院?」
「そうだけど。」
○○整骨院と聞いて、きみちゃんは急に声をひそめて、
「知ってるかい?あそこの医院長、またギャンブルに金つぎ込んで、こないだ
奥さんと大喧嘩だったらしいよ。」
と、いかにも自分だけが知っている重大な秘密を、わざわざ打ちけてあげるの
だとでもいうような、ちょっと優越感に浸った目をして千代に耳打ちした。
千代は またはじまった と内心ため息をついた。
「あそこの奥さんも苦労するねぇ・・。」
きみちゃんは、誰かに話したくて話したくて仕方がないといった様子で、さらに
続けた。
「あんまり大きな声でけんかしてたから近所中に丸聞こえだったんだってさ。
で、隣に住んでる奥さんが一部始終を話してくれたんだけど・・・・・。」
その話は千代も知っていた。
きみちゃんほど詳しくは知らなかったが、町中のうわさになっていたので知らな
い者はいなかった。だからきみちゃんが、自分一人だけが知っているような顔
をして話をしているのがおかしかった。

  きみちゃん。アンタは昔から話し好きなだけなんだよね。それはわかっている
  んだけどねぇ・・・・。話が長いのよ・・・ソレさえなけりゃどんなにいいかって
  時々思うことがあるよ。

千代がそろそろうんざりしかけてきた頃
「そういえばさ、スターシアさん、見た?」
と唐突にきみちゃんが言った。
あまりに唐突だったので、千代は最初きみちゃんが何を言っているのかわか
らなかった。
「あのさ、スターシアさん見た?」
もう一度きみちゃんが言った。
今度は千代ははっきりときみちゃんが何をいっているのかわかった。
「うん!見た、見た!!」
千代は激しく相槌をうった。
町内の取るに足らない噂話なんかじゃなく、スターシアの話題だったので、千
代は珍しくきみちゃんのおしゃべりに身を乗り出した。
「きれいな人だったねぇ〜〜〜〜。」
「うん、うん、そうだね。」
「スターシアさんって本当にいたんだね」
「やだぁ、きみちゃん。こうしてあたしらが、地上の商店街で買い物してられる
んだもの、コスモクリーナーのお陰でね。いるに決まってるじゃない。」
「そうなんだけどさ、イスカンダルに行ったこともないあたしらにはしんじらんな
い気がするんだよ。」
「まぁ・・・ねぇ 確かに。」
今朝方、自分が娘に言った言葉を思い出しながら千代はきみに頷いた。
「いつかスターシアさんに会いたいねぇ。」
「は?何いってんの?きみちゃん。雲の上の人だよ。」
「あはははは〜〜、そうだよね。でもさ、あたしゃ何とかして会いたいって思う
ね。」
「無理だと思うよ」
「そうかなぁ」
けれどもきみちゃんなら本当に会っちゃうかもしれないな、と千代はなぜかそう
思った。
「だってさ、お礼がいいたいだろう?。」
きみちゃんが真剣な顔つきで言った。
「まぁ、それは・・・あたしだって言いたいよ。でも、無理だと思うよ〜〜。」
「・・・・。そんなことないって気がする。アタシのカンがそう言ってる。」
「あはは、まぁそうなることを祈ってるよ きみちゃん。宝くじ当てるより難しいと
思うけど?」

二人はかないっこない夢を頭に描きながら商店街の端っこまでやってきた。
きみちゃんはこれから保育施設に孫を迎えに行くんだと言って千代と別れた。


お礼の気持ちを伝えたい

これは地球人なら誰しもスターシアに抱いている想いだった。
千代もきみに負けず劣らず、いや、きみ以上にスターシアに会いたいと思って
いる一人だった。
出来るなら直接会ってお礼が言いたい。
そんなことは不可能だということは十分わかっていた。


賑やかな町の営みは夕暮れ時の朱い光に包まれていた。

  ゴマあえを作って娘のところに持っていってやろう。

千代は娘夫婦や孫の顔を思い浮かべながら思った。
小さな自分の家と娘夫婦と孫。
これからは、ずっと ずっと ささやかに日常が巡っていけばそれでいい。
それこそが自分が一番望んでいたことだ。 
この日常がどうぞ、もう二度と崩れませんように
と千代は強く願った。




「千代さん〜〜〜〜〜!ご無沙汰してます!久しぶり〜〜〜〜。」
千代が帰宅するとリビングに設置されているビジフォンのコールがけたたまし
く鳴っていた。ディスプレイの番号表示も確認せずに急いで受話器をとると、
それは地球防衛軍本部の総務部に勤める千代の知り合いからだった。
知り合いといっても千代が寮母をしていた頃の知り合いだから、随分と久し振
りに聞く声だった。
「榊ちゃん〜〜本当に久しぶりだね。どうしたの?突然。アンタ元気だった?
まだ総務に勤めているんでしょう?  うん・・・うん・・・・そうなの、そりゃよかった。
っていうか、いいの?まだ勤務中でしょ?ウチに電話なんかしてきていいの?」
「あのね、あのね、千代さん!おりいって頼みが・・・・」
相手の声は何故か興奮気味だった。
「榊ちゃん?」
一瞬の間があって、どうやら相手の 榊ちゃん は電話を代わったらしかった。
「お久し振りです、千代さん。古代です、古代守です。」
「・・・・・!!・・・・」
千代は思わず ガチャン と受話器を置いた。

  これは何かの詐欺?
  守君は死んだのではなかった?
  告別式(合同の)に参列したもの。
  いやいやいやいや・・・・・・
  あの榊ちゃんが詐欺をはたらくワケないし・・・・

ビジフォンのモニターはオフにしてあったから相手の顔はわからない。
千代は新聞の写真が気になった。
それに、あの なんとなく風に乗って流れてきた話、
イスカンダルで奇跡的に地球人が救助されていた というのも気になった。

  守君・・・まさか・・・・!

千代の心臓はドキドキと鳴った。
そのとき

   トルルル・・・・・トルルルル・・・・・・・

再びビジフォンが鳴った
千代の脈拍数がピンと跳ね上がった。
出るか出ないか、一瞬迷った千代だったが、思い切って出てみることにした。
すると・・・・
「あの・・・・大沢さんのお宅でしょうか?」
男性の低めの落ち着いた声、千代の知っている人物とよく似た声が控えめに
受話器の向こうから聞こえてきた。
「はい」
千代は返事をした。
「そちらに千代さんはご在宅でしょうか?」
「千代はわたしですが。」
「ああ、千代さん!よかった〜。さっきは切れてしまったから、どこか操作を間
違えたのかと・・。お久し振りです千代さん。古代守です。」
「・・・・・・。」
「千代さん?」
「・・・・。アンタ誰?アタシはね、守君の告別式に参列したんだよ。アンタ誰?」
「・・・・・・。千代さん・・・・。よければモニターをオンにしていただけませんか?」
千代は震える指でモニターのスイッチをオンにした。
そこには、懐かしい、でも千代がよく知っている顔よりは幾分筋張って、落ち着
いた雰囲気の顔が映し出されていた。
「・・・・!守君・・・・!!幽霊なの?! 」
「・・・・生きてますよ。ちゃんと。」
千代はじっとモニター画面を瞬きもせずに見つめた。
このビジフォンはどこか壊れているんじゃなかろうか、画面の向こう側の人間
はいったい何をしゃべっているのだろう。千代はいまひとつこの状況を理解出
来ずにいた。
「なんで?守君はそこにいるの?なんで・・・・なんで・・・・よくわからないよ。」
守は、千代が防衛軍寮の寮母をしていたころの寮生だった。
同期の真田と二人して、非常にユニークな寮生活を送っていたため、さんざん
千代の世話になった守だった。
それだけに千代にとっては大勢いる寮生の中でもとりわけ守は真田とともに
印象深い存在だった。冥王星海戦で守が戦死したと知った時、千代は随分と
心を痛めたのだった。
「いろんな事があったのですが、こうして生きのびて地球で生活をすることにな
りました。」

  することになりました・・だって?

千代は はた と思った。
「・・・・・・・。イスカンダルに救助されてた地球人がいたって・・・そんな話がある
んだけど。」
「それは私です。千代さん。」
画面の向こう側の古代守が言った。
「今朝の新聞で・・・・・写真の隅っこに写ってたのは・・・・」
「それも私です。」
「・・・・・!・・・・」
「千代さん、本当にお久し振りです。」

  あの守君が生きていただなんて・・・・・!

千代はほっぺたをつねってみた。
痛かった。
「本当に、本物の守君なんだね。」
「はい。」
千代の視界がじわりと滲んできた。

  ああ・・・・守君だ・・・・守君なんだ!

「アンタいったい今の今までどこでどうしてたの!生きてるならちゃんと連絡し
なきゃダメじゃない!みんなアンタが死んだと思って随分悲しい思いをしたん
だよ。」
守が生きていると理解するや、千代は堰をきったようにモニターに向かってし
ゃべり始めた。
「千代さん。あの・・・・そのことは後でゆっくりお話しようと思います。」
そう言う古代守の目にもうっすらと涙が浮かんでいた。
「そうかい?ね、ね、近いウチに会えるよね。会って話が出来るよね。」
「もちろんですよ、千代さん。千代さんさえ良ければ明日にでも。」
「え?」
「実は今日、榊さんを通じて千代さんに連絡を入れさせてもらったのは、千代さ
んに頼みごとがあるからなんです。」
「どんなこと?出来ることならなんでも聞くよ。」
「・・・・。千代さん。もう一度宮仕えしていただけませんか?お願いします。」




千代は夢をみているような気分でエアカーを走らせていた。

「そういうわけだから千代さん、明日、少し遠回りになって申し訳ないけれど、
本部の総務に寄ってね。受付でアタシの名前を言って下さい。すっとんでいき
ますよ。そしたら千代さんの色々の登録作業にアタシ付き添います。そうして
から古代さんの官舎に向かってください。」
昨日、モニター越しに古代守と再会を果たし、ひとしきり泣いた千代に、守から
再び代わったビジフォンで、榊ちゃんはいろいろと事務的な話をした。
半分上の空だった千代だが、それでも何とか榊ちゃんの言うとおり、防衛軍本
部に寄って様々な手続きをし、今、守が妻と一緒に住んでいるという官舎に向
かっているのだった。

  妻・・・・!そうよ!守君結婚してたのよ。
  何でそんな大事なことも知らせなかったの!って言ったけど笑ってはぐらかさ
  れてしまったわ。あの微笑はキケンだわ〜〜〜〜。
  その奥さんのサポートをしてほしいって繰り返し言うだけなのよね、守君。詳し
  いことは会ってから話すって。なんだってそのサポートのために、アタシがまた
  防衛軍に臨時登録されなきゃなんないのかわかんないわ〜〜〜。
  普段地球で生活するのに必要なことを奥さんに教えてやって欲しいってことな
  んだけど、なんで????そんなの奥さんの実家か親戚が教えればいいんじ
  ゃない?守君が教えたっていいってもんよ。だいたい地球で生活するの
  に・・・・ってさ・・・・。宇宙人じゃあるまいし・・・・・・
  ん?・・・・・宇宙人・・・・!!

千代は予感めいたものを感じ、胸がドキドキした。

  まさか・・・・ね。とにかく行って話を聞く。
  この仕事、受けたからには、守君の奥さんがどんなヒトだろうと、アタシはちゃ
  んとサポートするまで。

千代はハンドルを握りなおすと、前方をきっと見つめてエアカーを走らせた。




「ああ、千代さんお待ちしてました。さ、どうぞ」
官舎に到着した千代を守はにこにこして自宅の玄関に迎え入れた。
「ああ、守君!守くんだぁ〜〜〜!!」
と千代も大にこにこで守の差し出した手を強く強く握って握手をし、ハグをした。
「千代さん?」
「だってさ、守君が本当に生きているって確かめたいじゃない〜〜〜!」
あははは・・・と守が陽気に笑った。
「さぁ中へどうぞ。妻もあなたを待ちかねてます。」
「・・・!守君、守君の奥さんって、よほどの箱入り娘なの?」
「さぁ・・・・。」
守はただただ微笑んでいるだけだった。
「とにかく会ってください。それから話しましょう。」



さらさらと長い金色の髪が窓から入ってくる光にあたって輝いていた。
白くほっそりとしたその人は、少しはにかみながらこう言った。
「はじめまして。」
地球人・大沢千代は、今まさに目の前にいる女性に驚愕し、石のように固まってしまった。

  この女性は・・・この方は・・・・!!

「千代さん?・・・千代さん??もしもーーーし」
守が千代の目の前に自分の手をひらひらさせた。
一瞬の後、千代は解凍して守に言った。
「ま、守君、この方は・・・守君の奥さん?」
「ええ。」
「古代スターシアです。よろしくお願いいたします。」
幾分低めながら、しかしよく通る澄んだ声で、そのスターシアと名乗る女性は
千代に挨拶をした。
「お・・・大沢千代です。これからよろしくお願いいたします。」
千代もなんとか挨拶をした。

  ・・・・スターシアさんだぁ〜!スターシアさんだぁ〜!スターシアさんだぁ〜!・・・

興奮のあまり、千代はすっかり舞い上がってしまっていた。
「なんてきれいな奥様!
・・・あの守君がねぇ・・・・・こんな素敵なヒトが奥様だんなんて・・・。
あの守君がねぇ・・・。なんてきれいな奥様なんでしょう・・・・。」
千代があまりに きれいな奥様 を連発したので、スターシアは顔を真っ赤に
してうつむいてしまった。

  あ、かわいい・・・・かも

千代にとって雲の上の人だと思っていたスターシアが、一気に身近に感じられ
た瞬間だった。
「千代さん、私はスターシアは宇宙一美しいと思っています。
私の心の半分、宝です。」
「守・・・」
守が臆面もなくそう言ったので、ますますスターシアは赤くなって、今にも夫の
背中の影に逃げ込んでしまいそうな勢いだった。
「ま・・・守、千代さんに お茶??でしたわね、お出しするのでしたね。地球で
はそうするのでしょう?」
スターシアがやっとのことで守に言った。
「そうだよ。でもそれは俺がするからいいよ、スターシア。君は千代さんとソファ
に座っていてくれ。」

  まぁまぁ、守君ったら・・・

そんな守とスターシアの微笑ましい様子を見て千代の緊張は一気にとけてし
まった。
そうなると千代はテキパキと話し始めた。
「そういうわけだったのね、守君。だからサポートなのね。もう〜〜もうちょっと早く
教えてくれればよかったのに。」
「千代さんを驚かせようと思って。」
リビングの向こう、対面式のキッチンでお茶を入れながら守はクスクス笑った。
「さぁ、どうぞ。」
守が千代に差し出したお茶は貴重な ホンモノ だった。
「ああ、いい香りね〜。いいの?こんな大切なお茶」
「これはユキの・・・弟の婚約者ですが、ユキの差し入れなんです。これからお
世話になる千代さんのためですから、こういう時こそホンモノを淹れようと思い
まして。」
「ありがとう、守君」
お茶を一口二口すすると千代はスターシアの方に向いて、あらたまってこう言った。
「スターシアさん、ようこそ地球にいらっしゃいました。私でよければ、心をこめてサ
ポートさせていただきます。」
「スターシア、この間も話したけれどね、千代さんには本当に、お袋のように世
話になった人なんだ。体もデカイいけど心もデカイいヒトなんだよ。」
守は目をちかちかっと輝かせて、けれども大そうまじめな顔をしてそう言った。
「守君・・!さりげに失礼なコト言ってない?寮でのアレコレ、今お話しましょうか?」
千代も負けじと言い返す。
「いや、それは・・・まいったなぁ〜」
守と千代は あははは と笑った。
その二人に釣られてスターシアも微笑んだ。
「あの、千代さん、これからよろしくお願いいたします。」
スターシアはそういうと千代に手を差し出した。
一瞬 目を丸くした千代だったが、スターシアの手を握り返してやさしく握手を
交わした。




  スターシアさんはお腹に赤ちゃんがいるのね。
  あの守君がパパになるなんてねぇ。
  守君は来週から仕事に復帰するって言ってた。
  それにしても、なんという幸運なんだろう。
  守君がアタシのことを覚えてくれていて、スターシアさんのサポートに指名して
  くれたなんて嬉しいじゃない。いくら守君の両親が亡くなってるからってさ。
  本当に嬉しいよ・・・。

帰りのエアカーの中、一人千代は昨日から続く感動の余韻に浸っていた。

  いやぁ〜半世紀生きてきた中で一番のびっくりかもね。
  守君が生き延びてて、こうしてまた再会できるなんてね。
  しかも奥さんはスターシアさんだよ・・!
  ガミラスなんかより、彗星帝国なんかよりもびっくりよ。
  アタシにとってはね。
  人間生きてりゃいろんなことがあるモンだねぇ・・・・。

ゴキゲンでエアカーを走らせていた千代だったが、ふと思った。

  おしゃべりなきみちゃんには今度のことは絶対にヒミツ。
  そうでなくたって守秘義務ってものもあるんですからね。

千代はにんまりとした。
千代の心は、忙しくなるであろう明日からのことを考えてうきうきとしていた。

おしまい



2013.7.2

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